いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「はたらく魔王さま!」和ヶ原聡司(電撃文庫)

はたらく魔王さま! (電撃文庫)
はたらく魔王さま! (電撃文庫)

世界征服まであと一歩だった魔王サタンは、勇者に敗れ、異世界『日本』の東京・笹塚にたどり着く。
そんな魔王が日本でできること。それはもちろん“世界征服!!”──ではなく、アルバイトをして生活費を稼ぐ、いわゆるフリーター生活だった!
その頃、魔王を追って時空を越えた勇者エミリアもまた、テレホンアポインターとして日本の貨幣経済と戦っていた。そんな二人が東京で再会することになり──!?
六畳一間のアパートを仮の魔王城に、今日も額に汗して働くフリーター魔王さまが繰り広げる庶民派ファンタジー。第17回電撃小説大賞<銀賞>受賞作登場!


なんという生活感。なんという世知辛さ。
世界征服を企む魔王とそれを阻止する勇者のはずが、やっていることはお金や食事の心配や各種手続きに四苦八苦。このスケールのギャップが予想外に面白くて笑える笑える。
そんなズッコケそうな状況の中で動くキャラ達がまた良い。粗野な面もあるけど基本いい人な魔王様と、ドジっ娘ツンデレの素養たっぷりの勇者エミリアを中心として、それぞれに個性はありつつ気の良いキャラクターばかりで読んでいて気持ちがいい。それに加えて、ボケとツッコミがコロコロ入れ替わる会話は軽快で、特にそれぞれの個性が出ているツッコミが面白い。
そんな感じでコメディは抜群、盛り上げるところはしっかり盛り上げてくれるし、ニヤニヤありハートフルありでとても面白かった。
あとがきのセンスを含めて、とても新人とは思えない。ファンタジーに生活感というリアルを持ち込んで、違和感なく、しかもここまでコミカルに仕上げた筆力は見事。
2月発売の新人賞5冊の中では一番。