「美姫を守り単機敵中翔破一万二千キロ」その偉業を成し遂げたレヴァーム皇国軍の飛空士「海猫」の前に立ちはだかった最大のライバルにして、天ツ上海軍の撃墜王・千々石武夫。独断専行により一騎打ちを仕掛け、海猫に敗れた千々石は、再戦を胸に秘めていくつもの空戦場を渡る。「出てこい、海猫」激情の赴くままに撃墜を重ねる千々石のその胸中には、天ツ上の国民的歌手・水守美空の歌があった……。空前の大ヒットとなった『とある飛空士への追憶』の舞台、中央海戦争の顛末を描く、新たなる恋と空戦の物語。上下巻で登場!
ガガガの刊行予定を見た時は「ああ延命か」と思ったが私を許してください。文句なしで面白かった。『とある飛空士への追憶』の感動も蘇ってきた。『恋歌』は舞台が同じなだけの別の話だったけど、これは間違いなく『追憶』の続編だ。
シリーズ共通の空への渇望、臨場感あふれる空戦、切なさが強いロマンスはそのままに、そこに男臭さ、男のロマンも加わって、今までの作品よりもさらに“空”を強く意識させるので、不思議な高揚感がある。それに主人公・千々石の寡黙な性格もあって、どこか哀愁を感じさせ、『恋歌』はもちろん『追憶』よりも大人な雰囲気が自分好み。
また、同じ空戦でも前作とは見える景色が違う。技術や戦術がしっかりした千々石の空戦は、優位に立っている時は爽快感を、苦しい戦況では前作の「とにかく必死」とは一味違った緊迫感が味わえる。
海猫との決着、戦争の行方(ファナ出てくる?)、ユキとの関係など気になることが多くて、下巻が待ち遠しい。