いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「とある飛空士への夜想曲 上」犬村小六(ガガガ文庫)

とある飛空士への夜想曲 上 (ガガガ文庫)
とある飛空士への夜想曲 上 (ガガガ文庫)

「美姫を守り単機敵中翔破一万二千キロ」その偉業を成し遂げたレヴァーム皇国軍の飛空士「海猫」の前に立ちはだかった最大のライバルにして、天ツ上海軍の撃墜王・千々石武夫。独断専行により一騎打ちを仕掛け、海猫に敗れた千々石は、再戦を胸に秘めていくつもの空戦場を渡る。「出てこい、海猫」激情の赴くままに撃墜を重ねる千々石のその胸中には、天ツ上の国民的歌手・水守美空の歌があった……。空前の大ヒットとなった『とある飛空士への追憶』の舞台、中央海戦争の顛末を描く、新たなる恋と空戦の物語。上下巻で登場!


ガガガの刊行予定を見た時は「ああ延命か」と思ったが私を許してください。文句なしで面白かった。『とある飛空士への追憶』の感動も蘇ってきた。『恋歌』は舞台が同じなだけの別の話だったけど、これは間違いなく『追憶』の続編だ。
シリーズ共通の空への渇望、臨場感あふれる空戦、切なさが強いロマンスはそのままに、そこに男臭さ、男のロマンも加わって、今までの作品よりもさらに“空”を強く意識させるので、不思議な高揚感がある。それに主人公・千々石の寡黙な性格もあって、どこか哀愁を感じさせ、『恋歌』はもちろん『追憶』よりも大人な雰囲気が自分好み。
また、同じ空戦でも前作とは見える景色が違う。技術や戦術がしっかりした千々石の空戦は、優位に立っている時は爽快感を、苦しい戦況では前作の「とにかく必死」とは一味違った緊迫感が味わえる。
海猫との決着、戦争の行方(ファナ出てくる?)、ユキとの関係など気になることが多くて、下巻が待ち遠しい。