異国迷路のクロワーゼ Le cahier d’ Yune (富士見ファンタジア文庫)
「大切な思い出がいっぱい、です」
19世紀末フランス、パリ。近代化の波に取り残された小さな商店街・「ロアの歩廊」、その一角にある鉄工芸品店「ロアの看板店」で働く日本人の少女・湯音。フランス語に不慣れな湯音は、ある日曇った窓ガラスに文字の練習をしていた。それを見た店主の少年クロードは毎日起こったことを綴れるようにと、1冊の日記帳を贈る。
クロードや彼の祖父オスカーとの生活の中で、異なる文化に戸惑いながらもひたむきに乗り越えていく湯音の優しい出逢いの物語。
おお、雰囲気そのままだ。
あのちょっと薄暗い店でちょこちょこ動き回る湯音が容易に思い浮かべられる。
キャラクターも問題なし。心洗われる湯音のひたむきさも、苦笑するしかないクロードの不器用さも、アリスのうざさもw
久々に湯音を愛でられて、新しいエピソードに触れられて大いに満足な内容だった。
強いて言えば、口絵がアニメの絵なのだけが残念。表紙もParie2迷子のカラー版だったりするし、武田先生、相当忙しいんだろう。
第一話 蛍祭り
内容:幼少時の姉との思い出
姉の話は原作にも少しだけあったけど、こんな生活していたのか。田舎に住んでいると閉鎖的だと感じることが多いけど、この時代は今の比じゃないんだろうなあ。今の湯音の笑顔と裏腹な境遇に胸が締め付けられる。
それでも誰にでも優しい湯音の根本はここから来てるんだと思うと、なかなか感慨深いエピソード。
第二話 熱病
内容:泥棒少年の妹が病気に
湯音ひとり、しかも貧民街、なんという緊張感。湯音の優しさに心温まる話なのに、ハラハラ感の方が強いという。
最後は第一話から繋がる湯音の一言を受け止めたクロードにホッとする。
第三話 花見
内容:ユネの怪我が元でクロードと喧嘩
最も原作に沿った話だったかと。文化の壁にクロードの不器用さ合わさってこじれるいつものパターン。
大切なのは歩み寄ること、自分の価値観だけで判断しないこと、相手を信じること。この作品のテーマですね。