いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「妄想ジョナさん。」西村悠(メディアワークス文庫)

妄想ジョナさん。 (メディアワークス文庫)
妄想ジョナさん。 (メディアワークス文庫)

大学一年生の春、恋する僕は確かに幸せだった。憧れの人が、自分の妄想の産物だと気付くまでは。大学二年の秋、傷心から立ち直れない僕の前にひとりの女性が現れる。その名はジョナさん。彼女もまた僕の妄想の産物だ。驚いたことに彼女は、僕を妄想から解放すると宣言した。
自らの妄想に導かれ、壮大な脱妄想計画が幕を開ける! 大学キャンパスがロンドンに変じ、ラブホテルが魔王の城と化す、妄想にまみれた東京多摩市で展開する、騒々しくも切なく、悲しくも情けない恋の物語。


妄想が現実世界で見えてしまう大学生の物語。
悩み自体はそれなりに深刻なのだが、主人公の残念な行動や自分の妄想に叱咤される姿の情けなさが苦笑を呼ぶコミカルな作品。駄目大学生にへんてこサークルにちょっと不思議ワールドと、どことなく森見臭がする。

あらすじには「切なく、悲しい」とあるけど、これはどう読んでも痛い話w
中二病をネタにしたコメディと同種の痛さとむず痒さ。
本当なら同情を呼んでもおかしくない境遇の主人公なのに、妄想を抜きにしても行動が残念なので、可哀想という感情は浮かんでこない。それに加えて、ヒロインである妄想少女ジョナさんが可愛らしいので(特に恥じらう姿が◎)、それを一人芝居で演じている主人公を想像してしまうと居たたまれない気分が倍増する。
そんな感じで主人公の負の連鎖を、苦笑失笑しながら読んでいたのだけど・・・。
あれ? なんで最後切なくなっているんだろう?
最後の真面目さ必死さは卑怯だ。読み終わった後に我に返ると、やっていることの滑稽さに「なんで感動したんだろう」と負けた気分に。でも、嫌な気分は全然ない作者の思惑にまんまとやられた気持ちいい敗北感。
凄く笑えるとか面白いという感じではなかったけど、普段とは違う種類の笑いと清々しい読後感が味わえる良い作品だった。