いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「ボンクラーズ、ドントクライ」大樹連司(ガガガ文庫)

ボンクラーズ、ドントクライ (ガガガ文庫)
ボンクラーズ、ドントクライ (ガガガ文庫)

あの頃の僕らは、恋がどんなものかも知らなかった――。ネットもケータイもない生活が当たり前だった1999年、とある片田舎の高校。肇とカントクは、夢だけは大きく「日本の特撮映画を変えること」だが、映画の撮影準備と称して憧れの特撮ヒーローになりきる「ごっこ遊び」に興じてばかりのボンクラ映画研究部。そんな「撮らない」映画研究部に、わけありの美少女が飛び込んできて――。男子ってやつは……バカで、むき出しで、まっすぐで、最低だけど最高だ!!  誰しもが通り過ぎる、恥ずかしく、苦く、痛々しい青春模様。


ある一点を除けばいい青春ものだったと思う……たぶん。
冒頭からその一点に大きな嫌悪感を抱いてしまったので、全く楽しめなかった。
その一点とは映画研究部部長、通称カントク。
口だけ達者で自分では何もしない。全てにおいていい加減。困ればすぐ逃げる。こういうタイプの人間は心底嫌い。吐き気がする。こういったタイプの良いところが全く見当たらないキャラはどの作品にでもいるが、こいつのために他のメンバーが動いているというのが不可解で不愉快。こんな奴についていく二人の気がしれない。
勝気なヒロイン・桐香がある一シーンを撮るために思い悩む甘酸っぱさも、主人公の佐々木が自分の気持ちを飲み込むラストシーンの切なさも感じられたんだろう、相手がこいつじゃなければ。なんでこんな奴のためにと思う疑問とがっかり感が勝って、そういう気分になれなかった。
カントクというキャラが気持ちのいいバカか完全な敵役なら楽しんで読めて、いい青春ものだったと言えたかもしれない。