いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「誰よりも優しいあなたのために」あきさかあさひ(一迅社文庫)

誰よりも優しいあなたのために (一迅社文庫)
誰よりも優しいあなたのために (一迅社文庫)

私は、誰からも必要とされていない人間だった。もちろん研究所にとって不可欠な存在だったはずだけれど、それは一個人であるメイ・オータムをではなく、あくまでも被験体ナンバー5ACを必要としているだけのことに過ぎなかった。
そんな私が生まれて初めて経験した、その気持ちとは――これはメイとみまり、二人の少女が描くハートウォーミングな物語――

謎の宇宙生物によってそのほとんどを支配された地球。わずかに生き残ってた人間がいる土地、日本。
宇宙生物に唯一対抗できる兵器サイコドライブ・ギアの能力を最大限に発揮させるべく開発されたサイコドライブ・チルドレン。そのサイコドライブ・チルドレン、いわゆる実験動物として扱われてきた為に人間としての生活を知らなかった少女・メイが、実戦投入を機に外に出て11歳の少女なら当たり前に知っている/やっていることを一つ一つ経験していき、その一つ一つに感動を覚えていくというハートフルストーリー。



タイトルとあらすじからでは想像できなかったシビアな世界観に驚いたものの、その内容はタイトル通りに優しさに溢れた物語だった。SFの設定やアクションの方はかなり無理がある感じがするが、本題じゃないので特に気にならない。
とにかくメイに周りの人たちみんなが優しく温かい。
戦力としての期待というのもあるのだろうが、そういう面を感じさせないほど、純粋に一人の少女を大切にしたいという気持ちが伝わってくる。
それに、初めてのことばかりで自分の感情に翻弄されながらも、周りの人たちの想いに一生懸命応えようとするメイの姿にまた温かくなる。
また、戦闘シーンがあったりもするが感情の起伏が少ないメイの視点で語られるため淡々としていて、終始落ち着いた雰囲気なのも周りの優しさに合っている。
少々出来過ぎで泣くようなラストではないのだけがちょっと残念だが、作品全体で気分を落ち着かせてくれる心が洗われるような作品だった。