いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「グロリアスハーツ」淡路帆希(富士見ファンタジア文庫)

グロリアスハーツ (富士見ファンタジア文庫)
グロリアスハーツ (富士見ファンタジア文庫)

シローフォノ軍の研究機関『クルイドル』にて生まれた、怪異の力を持つ人型の生命兵器――『贋人(ギニョル)』
贋人として生まれた少女・ユズカと、ユズカを人間にしたいと願う少年・アルトゥールの二人は、贋人の秘密を知る唯一の人物と言われる研究者・ディニタ・イングリスの行方を探している。
ユズカの冷気を操る能力『氷姫』を利用して、宅配業を営みながら旅を続ける二人だったが、ある日立ち寄った街で贋人の心臓『マテリエ』を狙う『贋人狩り』に遭遇し――。
旅立ちは三人、大切な人を失ったあの日、守りたいと願う激情が、少年の中に眠る7つの龍を呼び起こす本格ファンタジー!!


人間でありながら炎の能力が使える少年・アルトゥールと生物兵器『贋人(ギニョル)』として開発された少女・ユズカが、普通の人間になる方法を探す旅路を描いたファンタジー
基本はコミカルで尻に敷かれている主人公と怒る貧乳ヒロインの構図。切なさ全開の前作よりはデビュー作に近い雰囲気。
でも印象に残るのはシリアスなシーン。それと少し前まで居た仲間・メリッサの存在の大きさ。
もう仲間を失いたくないという想いが二人の強い結び付き感じさせるばかりか、回想シーンやアルやユズカが物思いにふける時には切なさを増幅し、ピンチの時にはアルが覚醒するきっかけをと、一人の少女の死を物語の中心した話の作りが上手くて自然と物語に引き込まれる。
アルとユズカが追っている男の存在、軍と『スターダスト』という敵、メリッサの死の真相に主人公に隠された謎など1巻らしい伏線張りも申し分なく、兄妹から少し関係が進んだ二人の今後共々続きが非常に楽しみ。