いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「ベイビー、グッドモーニング」河野裕(スニーカー文庫)

ベイビー、グッドモーニング (角川スニーカー文庫)
ベイビー、グッドモーニング (角川スニーカー文庫)

「私は死神です。つい先ほど、貴方は死ぬ予定でした。でも誠に勝手ながら、寿命を三日ほど延長させて頂きました」夏の病院。入院中の少年の前に現れたのは、ミニスカートに白いTシャツの少女だった。死神には、月ごとに集める魂の“ノルマ”があり、綺麗なところをより集めて新しい魂にする=「ペットボトルのリサイクルみたいなもの」と言うのだが……。『サクラダリセット』の河野裕椎名優が贈る、死神と四つの濁った魂の物語。

死を目の前にした人間の前に現れるTシャツとデニムのミニスカートを着た可愛い死神。サクラダリセットを生んだコンビが送る生きること死ぬことについて考える優しくて切ない四編の連作短編。



二編目に印象に残った台詞がある「未練は、正常です」
そう、どの話も死を迎える人物を中心にした話なのだが、誰もが心配事を抱えていたり未練を残していたりと、納得もしていないし満足もしていない。
なので自分なら彼らのように割り切れるだろうかとか、死神がした宣告と作った猶予は良かったのか悪かったのか判断がつかなくて、悩みながら読んだのが前三編。
でも最後の一遍、主人公が看取る側だった『クラウン、泣かないで』だけは素直に泣けた。
全てがここに帰結する一冊の本としての作りに感動しつつ、そこに込められた3つの想いの終着点に涙が出た。
人の死に良いも悪いもない。故人の遺志に関係なく生きている人間が勝手に決めてしまうものだと思っている。でも、こんな風に誰かに何かを残せたと、大切な人に伝わるのならどんなに幸せだろう。
サクラダリセット』とは少し違った雰囲気だったけど、これもまた綺麗な話だった。