いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「金星で待っている」高村透(メディアワークス文庫)

金星で待っている (メディアワークス文庫 た 4-2)
金星で待っている (メディアワークス文庫 た 4-2)

その日、人類は初めて金星人と遭遇した――。


僕は劇団の稽古場で、入団希望の女の子を面接していた。自らを「金星人」だと名乗る彼女は、印象的な瞳を輝かせながら自信たっぷりに言う。「どこからどう見てもそうです」。  弱りながらも、僕は彼女の入団を受け入れた。目の前で演じた即興芝居が抜群にうまかったから。けれど彼女の加入で、僕らの劇団、いや僕らの人生は大きく変わるのだった……。
小さな劇団を舞台に、夢を追いかける個性的な若者たちを鮮烈に描く、甘酸っぱさ満載の青春群像劇。


「夢追い人たちの甘酸っぱい青春群像劇」どこいった?
夢追い人らしい熱さや眩しさなし。甘酸っぱさや青春らしさもほぼなし。そもそもずっと主人公の一人語りで群像劇ではない。さらに言うと「金星」という単語の存在価値もなし。
内容もただ漫然と流されて生きている青年の日常が八割。文章が散文的というかぶつ切りでかつ陰鬱。まるで愚痴っぽい人の日記を読んでいるよう。
終盤になってヒロインの発破でようやく物語が動き出すが、主人公の性格上やる気を出したというより冷静になったという表現の方が近い上に、演劇の描写は限りなく少なく、これといって盛り上がりはない。男同士なら王道でも男女でそれやっちゃダメだろという青春シーンと、ヒロインではなく端役のバイトの女の子との甘酸っぱいシーンを一瞬だけ見せられても……。
あらすじ詐欺でも構わないですよ、内容が良ければ。残念ながら楽しめるところも感じるものもなかった。