いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「おおかみこどもの雨と雪」細田守(角川文庫)

おおかみこどもの雨と雪 (角川文庫)
おおかみこどもの雨と雪 (角川文庫)

大学生の花は、人間の姿で暮らす“おおかみおとこ”に恋をした。ふたりは愛しあい、新しい命を授かる。〈雪〉と〈雨〉と名付けられた姉弟にはある秘密があった。人間とおおかみの両方の顔を持つ〈おおかみこども〉として生を受けたのだ。都会の片隅でひっそりと暮らす4人だったが、突然“おおかみおとこ”が死んでしまう。残された花は姉弟を連れて田舎町に移り住むことを決意する――。映画原作にして細田守監督初の小説登場!

映画未視聴。



「母は強し」を一冊かけて説いたような作品。
おおかみおとこ――人に化けられる狼の男性に恋をするというメルヘンチックなオープニングを過ぎると、その先に待っていたのは、どうしようもなく現実だった。いや、人にもおおかみにも成れてしまう子供たちを背負う厳しさは現実以上だった。
他人には助力も助言も求められない子育てに近所との軋轢と都会のシーンでもすでに胸が痛かったのに、三人だけの田舎暮らしへと、子供たちの為にあえて茨の道ばかりを選んでいく様な人生が痛々しい。その激動の暮らしが極めて淡々と綴られていく文章と、普通のお母さんの何倍何倍も苦労しているのに笑顔を絶やさず弱音も吐かない花の姿にある種の凄みを感じる。
また、出会いはあっさりで別れが濃密に書かれているのも特徴。
特に違う道を選んだ二人の子供との別れは涙腺刺激度が凄い。初めの別れ以来決して泣かなかった花の涙にもらい泣きしそうになった。これは映像で見たら確実に涙が流れそうだ。
それよりも全ての苦難を乗り越えてきた花の笑顔こそ映像で視るべきなんだろうな。
地上波放映は二年後くらいかな?(借りる気はないらしい