いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「キノの旅 XVI ―the Beautiful World―」時雨沢恵一(電撃文庫)

キノの旅 XVI the Beautiful World (電撃文庫)
キノの旅 XVI the Beautiful World (電撃文庫)

「ボクは昔、一生海を見ることなく過ごすのかと思っていたよ、エルメス」キノが感慨深げにそう言うと、エルメスと呼ばれたモトラドが、軽い口調で返す。「まあ、この世界に住む、ほとんどの人がそうじゃない?」「そうだね。城壁の外に出る人の方が少ない。それは、旅をしてよく分かった」「もっとみんな、城壁の外に出て行けばいいのにねえ。この世界の人間は、どうも“ひきこもり”がちだよ」「“この世界”ってことは……、エルメスは、別の世界を知っているのかい?」「さあ? そんなの、あるの?」「聞いたのはボクなんだが……。まあいいや。――」(「死人達の国」より)など全10話収録。


キャーフォトサーン
まさか全体の四分の一がフォトメインとは。これはシズ、師匠に続いて準レギュラーの一角に名を連ねたと思っていいんだろうか。大歓迎です。
2話あってどちらも良かったけど、より印象に残ったのは2話目。目標を見つけると一直線な彼女がジャーナリズムに目覚めた瞬間が凛々しくて、その後の村人の反応と合わせて涙が出そうだ。章初めの挿絵の顔つきが違うのはこういう意味だったのね。あとはその精神が行き過ぎないことを祈るばかりだけど、彼女の性格と頼もしい相棒がいるから大丈夫かな。


さて、キノ他二組はいつも通り皮肉が効いた話いくつかと珍しくスプラッタな話が一つ。
こちらで印象に残ったのは「血液型の国」と「恋文の国・a」。キノがいつもより人と濃く関わっていた。
普段なら「血液型の国」のラストは事実を告げずにどうなるかな?ってエルメスと語りながら後にする(そしてどちらかが身も蓋もない結論を言う)パターンで、「恋文の国・a」もそもそも関わらないか最後は真実を告げるかのどちらか。
キノには珍しく人恋しい気分だったのかな? ただ、優しい嘘を言うキノが想像できないんだよなあ。
よく考えたら「恋文の国」は久しぶりのニアミスだったのか。キノとシズはどうでもいいけど(失礼、モトラドと犬の会話は久々に読んでみたいかも。