いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「氷の国のアマリリス」松山剛(電撃文庫)

氷の国のアマリリス (電撃文庫)
氷の国のアマリリス (電撃文庫)

氷河期が訪れ、全ては氷の下に閉ざされた世界。人類は『白雪姫』という冷凍睡眠施設で眠り続け、そして、それを守るロボットたちが小さな村を形成し、細々と地下での生活を続けていた。
副村長の少女ロボット・アマリリスは崩落事故による『白雪姫』の損傷や、年々パーツが劣化する村人たちのケアに心を砕いていた。再び人と共に歩む未来のために。しかしある時、村長の発した言葉に、彼女と仲間たちは戦慄する。「――人類は滅亡すべきだと思う」
機械たちの『生き方』を描く感動の物語。


ロボットたちがメインの話だがSFではなく、ファンタジーであり寓話。
ファンタジーとして読むなら切なくて泣けるいい話、『雨の日のアイリス』の作者の本領発揮といったところ。
次々と襲いかかる困難に助け合いながら立ち向かうロボットたちの姿、特に仲間のために自分を犠牲をいとわない姿勢が胸を打つ。
その中でも男性キャラの泣かせ力が際立っている。ポンコツと罵られながら唯一相手をしてくれた子の為に無理をし、最期は自分の使命を全うするギャーピー。若者に未来を託し真っ先に自分の身体を犠牲にする村長、アマリリスを助け続け、おまけに最期までクサい台詞を吐き続けたアイスバーン。お前らみんなカッコ良すぎるよ。
一方、寓話として読むとどう捉えていいものか悩む。
崩壊寸前にシェルターで、自分たちを犠牲にして冷凍睡眠中の人間を助けるか、人間を諦めてその施設の部品を自分たちの延命に当てるかの二者択一を迫られる訳だが、
これだけ考える力を持っていて、かつ映像で人間の負の面を見せつけられて、それでも人間(ご主人様)を第一に考えるのは、プログラムなのかそれぞれが持っている綺麗な思い出のためか。どちらにしても共感出来ない。自分ならこの立場に立たされたなら率先して人類滅亡論を説くだろう。
訴えかけてくるもの考えさせられるものはあるのだけど、何に置き換えれば良いのかわからない。自分の命と天秤にかけるのは、これまで信じてきたものでも家族でもこれとは少しズレている気がする。う〜ん。
泣かせるいい話に感動しつつも、自分の考えがまとまらなくてモヤモヤしている。いい読後感を味わいきれなくてちょっと損した気分になった。