いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「おんたま!」翡翠ヒスイ(電撃文庫)

おんたま! (電撃文庫)
おんたま! (電撃文庫)

小さな村の竜鱗高等学校に、篝火御霊という少年が転入してくる。実は彼は、妖怪の血を引いている者だった……。
妖怪が暮らす世界「天邪神宮」からやってきた御霊は、「人間らしい暮らしが、妖怪に出来るのか?」という試みのため、人間界で生活することになる。愉快な妖怪仲間の応援もあり、学校で出会ったボーイッシュな少女・七緒美久地と、人間らしい青春を楽しむのだが――。
妖怪と人間の架け橋になろうとする御霊を待つのは希望か、それとの絶望か?
夢に向かって突き進む妖怪少年を描く、ドラマティックな伝奇ストーリー!


タイトルや表紙のSDキャラからしてコメディ寄りの話を想像していたら断然シリアス、というかシビアな話だった。
とにかくガンガン主人公を追いこんでいく展開が痛々しいが熱い。
人間と妖怪の共存を目標にする優しい主人公が初々しい学園ラブコメを演じつつ、その裏でじわじわと厳しい現実を突きつけられていく。特に後半の戦闘では二重三重に重なる負の連鎖と裏切りで「ここまでやるか!」と感心しつつ、悲恋とままならない現実の辛さを噛みしめていたのだが……。
何故ここまで追い込んでおきながら、最後だけ非情になりきれなかったのか。
裏切った人たちに変に逃げ道や優しさを作ってしまったせいで結末が中途半端に。壊れるにしても悪役にしても最後までやりきってくれないと。そこを乗り越えてこその少年の成長でしょうよ。そこまでがシビアだっただけに、結末だけぬるま湯みたいだ。
それにぶっちゃけて言ってしまうと物語の盛り上がりを考えたら殺すのが逆でしょ。厳しい現実も悲恋も最後まで突き通して欲しかった。
最後以外はシリアスな妖怪ものとして面白かったが、最後が全然腑に落ちなくてスッキリしない。これならバッドエンドの方が納得できる。ライトノベルの対象年齢上、非道になりきるのは無理なのかなあ。