いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「からくさ図書館来客簿 〜冥官・小野篁と優しい道なしたち〜」仲町六絵(メディアワークス文庫)

からくさ図書館来客簿 ~冥官・小野篁と優しい道なしたち~ (メディアワークス文庫)
からくさ図書館来客簿 ~冥官・小野篁と優しい道なしたち~ (メディアワークス文庫)

京都の一角にある「からくさ図書館」は、優しげな館長さんと可憐な少女が二人きりで切り盛りする、小さな私立図書館
紅茶か珈琲を味わいながら読書を楽しめるアットホームな佇まいのこの図書館には、その雰囲気に惹かれて奇妙な悩みと出会ったお客様が訪れる。
それぞれに悩みを抱えたお客様に図書館長・小野篁が取り出すのは、解決法が書かれた不思議な書物で――。
悠久の古都で綴られる、ときにほろ苦く、けれど温かなライブラリ・ファンタジー


図書館という単語に惹かれて読んだら、彷徨う幽霊を成仏させる話が出てきた。そうか、冥官ってそういう意味か。
そんなわけで、京都の図書館を舞台に小野篁(←詳しくはキーワード参照)が幽霊に憑かれた人を助ける短編連作の物語。
幽霊と言っても、道なし=生前善行を積んで天道へ行けるのに何らかの未練で現世に残ってしまっている人達を送る話なため、成仏の際に大きないざこざは起きないので、おどろおどろしさやホラー的な要素は全くなし。逆にその道なしや疲れた人の心根に触れ、ほんのちょっとの切なさと大きな優しさが感じられる話になっている。
他には、繊細で柔らかい文章と表紙のイラストが相まって少女漫画のような雰囲気があるのと、小野篁を扱う作品とあって、平安時代にまつわる京の歴史に触れられるのが大きな特長。まあ、当の小野篁は少々変態の入ったすっとぼけた人物になっていたりするけどw
予想とは大きく離れたものが出て来て初めは面食らったものの、読み終わると優しい気持ちになれる良い物語だった。