いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「クレイとフィンと夢見た手紙」友野詳(MF文庫J)

クレイとフィンと夢見た手紙 (MF文庫J)
クレイとフィンと夢見た手紙 (MF文庫J)

金髪でいつもにこやかな自称頭脳労働担当の美形少年、フィン。黒髪で目つきが悪くいつも肉体労働担当を押しつけられる青年、クレイ。彼らが回収し、配達をするのは「出されなかった手紙」「書かれなかった手紙」「本当に欲しかった手紙」「普通じゃない手紙」など、届かないはずのメッセージ。彼らは〈永遠の昼下がりの森〉から輝く霧を通り、時には吸血鬼の城砦に、時には半獣半人の異種族にと、時も空間も超えて「手紙」を回収し、配達に行く。世界をささえる、ささやかな祈りを、明日をつなげる夢を、どこにでもいる「あなた」に届ける。〈郵便屋〉たちの物語が、今、始まる。

友野詳氏の作品を読むのは最初期のルナル・サーガ以来で恐らく20年以上のブランク。なので作風とかは全く覚えていないのだが、ゲーム作りに携わっている方なのでもっとがっちり世界観を固めてくる人のというイメージがあったんだけど……あれ? 違った?
男二人の主人公で一切の萌え要素、恋愛要素なしというMF文庫Jらしからぬ作風と、断片的にしか語られず全体像が見渡せない世界観に戸惑っているうちに終わってしまった。なんだかすごく勿体ないことをした気分。
特徴としては、切なくて優しい話というあらすじからの予想を覆し中身はかなりコミカル。
パラレルワールドを行き来する話なのだが、どこの世界も一癖二癖ある人物ばかり。そこに人を食ったような性格のフィンと、生真面目クソ真面目なクレイという二人の主人公が加わって、テンポのいい笑いが繰り広げられる。特に2話目の吸血鬼の脱力感は酷いw
また、後半の話になるにしたがってハートフル度が増していく構成と綺麗に収束するラストが見事で、じわじわと面白くなっていくタイプの作品。
これでもうちょっと分かりやすい世界観ならもっと素直に楽しめたんだけどなあ。