いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「魔法の子」入江君人(富士見ファンタジア文庫)

魔法の子 (富士見ファンタジア文庫)
魔法の子 (富士見ファンタジア文庫)

七十年前突如発現した人類の新しい力、魔法。ときを同じくして、のちに“特殊災害指定生物”と名付けられる化け物達が現れ始めた――。
魔法を疎む相馬アキラは召喚領域の復活が認められ、防衛型教育都市“時島”へ連行されてしまう。そこで妹の凜と五年ぶりの再会を果たし、自信の世話役となる桜田ノアと出会う。しかし魔法の復活を祝福するノアと衝突し、決闘をすることに……。そんな中、巨大な災害が島に近づいてきて――!?
魔法の力がもたらすのは繁栄か、災いか? 少年少女の想いが交差する、現代ダークファンタジー!!


素直にかつしみじみと「良かった」と思える一冊。
まず何がいいって、タイトルがシンプルなのがいいよね。最近はタイトルだけで購買欲が削がれるものが月単位でも相当数あるからねえ。
という内容に関係ないところは置いといて、
世界観/諸設定は、魔法が使える子供たちと生態不明の化け物に原因不明の天災。学園異能セカイ系、ボーイミーツガールなどが少しずつ入った、 ライトノベルとしては非常にオーソドックスなもの。取っ付きやすくて読みやすい以外は特筆すべき点は無し。
その代り、物語に流れる雰囲気はとてもいい。
魔法が生んだ悲劇の数々。その被害者であり加害者にも成りうる微妙な状況と心境を、主人公のアキラとヒロインのノアがそれぞれの立場から体現していて、物語はどこか物悲しくて切ない。でも、その二人がぶつかり合いながらお互いを理解しあって手を取り合うようになる様子は、最後まで読むと元気をもらえる。
デビュー作『神様のいない日曜日』もそうだけど、こういう感情に訴えかけてくるような物語を作るのが本当に上手い。特に今作はシンプルな設定で、読み手がキャラクターの心情に重きを置けるのがいいのかも。
続刊も決まっているようで、今後の展開に期待大。