いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「エスケヱプ・スピヰド 伍」九岡望(電撃文庫)

エスケヱプ・スピヰド 伍 (電撃文庫)
エスケヱプ・スピヰド 伍 (電撃文庫)

最強の兵器《鬼虫》たちはどのようにして集まり、人間から兵器になったのか――。過去の記憶が交錯する中、黒塚部隊に囚われた竜胆が蘇生する。
その頃、《蜂》の修理が進む登坂研究所で、巴は中央の高官から呼び出しを受けていた。これを好機と取った巴は、内通者のあぶり出しにかかる。そして、ついに巴の前に烏帽子が姿を現す。
そんな帝都の異常に、九曜は研究所から出動、街で朧に襲われる叶葉たちを見つける。再び朧と戦闘に入る九曜だが、その最中、叶葉と鴇子が黒塚部隊の手に落ちてしまい――?
最強の兵器《鬼虫》たちの神速アクション、緊迫のシリーズ第5弾!


読み終わって「ふぅ」と一息。
神速アクションの名に相応しい、ド派手なアクションと息をつかせぬ怒涛の展開。四巻の勢いそのままに、いやそれ以上の盛り上がり。敵戦力のお披露目、全面戦争への布石、それぞれの過去、そして蜂の復活。色々なものが一気に来た。
竜胆の過去=鬼虫たちの思い出からという静かなスタートだったが、静かだったのはそことその後しばらくだけ。敵の中心人物・烏帽子の出現を皮切りに物語が動く動く。
視点も忙しなく切り替わる。九曜、叶葉、虎杖の中核を担うキャラクターはもちろん、敵味方の主要キャラクター、端役と思われる人間の目線からも描かれ、どの場面でも刻一刻と状況が変わっていく。(一押しキャラ菊丸の視点がある理由によって少なかったのだけが残念)
その目まぐるしいストーリー展開と巨大ロボアクションだけでも読み応え十分なのだが、その上さらに、
二十年の空白がある戦後という特殊な状況が作り出す、多くのキャラの過去と目的と信念が複雑に絡み合った人間ドラマから目が離せない。
中でも大きかったのは叶葉の過去が少し明らかになり、敵との因縁ができたことか。メインヒロインながらマスコットキャラ、もしくは九曜の精神安定剤にして枷でしかなかった叶葉(酷い言い様w)が、これでやっとこの物語に参加できた感じがする。
弐、参と緩やかな下降線を辿っていたのでシリーズの尻すぼみを感じていたけど、、四とこの伍で一気に盛り返した。多方面が窮地な状況で続いているので、続きが早く欲しい。