いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「仮想領域のエリュシオン 001 シンクロ・インフィニティ」上智一麻(MF文庫J)

仮想領域のエリュシオン 001 シンクロ・インフィニティ (MF文庫J)
仮想領域のエリュシオン 001 シンクロ・インフィニティ (MF文庫J)

類稀な運動神経が取り得の兄、天陵大河。天才的なプログラミング能力が取り得の美少女妹、天陵冬姫。八年ぶりに一つ屋根の下で暮らすことになった兄妹は、二人だけで生きていくための生活費という問題に直面していた。冬姫が提案した工面方法、それは人々の生活に深く係わっている基幹システム、電脳世界の悪質なバグを倒して賞金を稼ぐことができるゲーム、構造体≪アリエス≫だった。不慣れな感覚に戸惑いながらも持ち前のセンスでゲーム内を無双する大河だったが、ある日、冬姫の親友の西園寺涙が正体不明のバグに襲われてしまい―――。「待ってるからね、王子様」破天荒なチート兄妹が繰り広げるハイブリッドバトルファンジー、ここに始まる!

MF文庫Jライトノベル新人賞佳作受賞作



離れ離れになっていた兄妹、共に天才でブラコン&シスコン、MMORPG風の仮想空間でウイルス退治のバイト。
というライトノベルらしいライトノベル。完成度が高くて読みやすい。
が……


流行りものの設定を寄せ集めて教科書通りに作りました。としか感じなかった。
設定が詰め込みな分、色々とほころびがあるが(電脳世界の説明があまりにも少なかったり、金銭感覚がおかしかったり)、問題はそこじゃない。
例えば同じMFの先月発売の新人賞作「ストライプ・ザ・パンツァー」(優秀賞)や「猫耳天使と恋するリンゴ」(佳作)と比べたら、キャラクター作りとその配置やクライマックスの盛り上げ方など、ライトノベルとしての完成度は断然にこちらの方が上だろう。でも続きを買いたくなるのは後者。パンツァーはバカで変態を力いっぱいやる豪胆さ、猫耳天使はヒロインの描写力とそれぞれに光るものがあった。でもこの作品には、これでしか読めないというオリジナリティは見つけられなかった。
新人賞で一番欲しいところが欠けているので、自分には魅力ない作品だった。