いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「穢れ聖者のエク・セ・レスタ」新見聖(MF文庫J)

穢れ聖者のエク・セ・レスタ (MF文庫J)
穢れ聖者のエク・セ・レスタ (MF文庫J)

天より与えられし無双の兵器「輅機(ロキ)」の力で世界征服を目論むフィガロ魔皇国。その圧倒的な武力を前に祖国を滅ぼされた亡国の皇子シリュウは、魔皇国の侵略戦争の最前線に立たされながらも、一切の戦功を認められない不遇の日々を送っていた。復讐に燃えるシリュウ。そんな彼の野望を見抜いたのは“聖女”と称えられる義妹エトラだった。「さあ、お義兄様、共に末短き未来を歩んでいきましょう」――その復讐に幸いと災いのあらんことを願う兄妹が“神代の詩(エク・セ・レスタ)”を詠う刻、絶望へとつながる叛逆の扉がここに開かれた。新時代の幕開けを告げるリベリオン・サーガ、降臨!

MF文庫Jライトノベル新人賞審査員特別賞受賞作



祖国は滅ぼされ、母は忌み者にされ、自身は養子として飼われる皇子シリュウによる復讐劇。魔法のあるファンタジーな世界だが、戦うのは輅機(ロキ)と呼ばれる巨大ロボットで、PCありテレビ電話ありと機械系は発達している独自の世界観。
三人称と一人称がごっちゃになっていたり、世界観の作り込みの甘さが目立ったり(純ファンタジーの世界の中に何故かあるヨーロッパと言う文字のもの凄い違和感)、最後にして最大の見せ場の輅機vs輅機のいわゆる巨大ロボット同士の対決に全く臨場感が無かったり(ただのキャットファイトだよね、これ)と、はっきり言って問題だらけ作品ではあるが、人物描写だけは素晴らしい。
キャラクターで目立つのは義妹・エトラ(表紙の子)
自称・聖女を皮をまとった女狐なのだが、その実態は女狐であろうと頑張る乙女。そんな彼女がSっ気たっぷりの主人公に対すると、要所で化けの皮が簡単に剥がれるのが何とも可愛らしい。やっぱり銀髪ヒロインにハズレなし(……多分)
それと、人の汚い部分、黒い部分を表現するのが非常に上手い。
この話での敵である変態姉弟の嗜虐性・残虐性然り、何度もはらわたが煮えくり返る想いをする主人公の胸の内の表現然り。また、その敵の変態性のおかげもあってか表現が所々で肉感的でエロいのも読みどころ。
良くも悪くも新人賞らしい作品。でも“良くも”の方が自分に合ったので面白かった。