いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「きんいろ・カルテット! (1)」遊歩新夢(オーバーラップ文庫)

きんいろカルテット! 1 (オーバーラップ文庫)
きんいろカルテット! 1 (オーバーラップ文庫)

「このみんなでずっと吹きたかったんです。私、目標があるんです」
ユーフォニアムという楽器の演奏者である摩周英司(ましゅうえいじ)は、恩師の紹介で中学生の少女たち4人の楽器コーチをすることになる。清楚で真面目な菜珠沙(なずさ)、元気な性格の貴ノ恵(きのえ)、しっかりものの美夏(みか)、上品でおとなしい涼葉(すずは)。「ブリティッシュ・カルテット」と呼ばれる日本の吹奏楽では馴染みのない楽器を演奏する少女たちに英司は感動し、彼女たちが最高の四重奏(カルテット)を奏でられるように奔走する。
心に響く青春音楽ストーリー、演奏開始!

オーバーラップ文庫キックオフ賞<金賞>受賞作



部活ものの王道青春ストーリー。
キャラ配置的に『ロウきゅーぶ』の音楽版というのが一番しっくりくる説明か。但し、それほどあざとい描写はなく、真摯に音楽に取り組む四人の少女と一人の大学生の姿を描く“青春”を前面に押し出した作りになっている。
とにかく印象に残るのは音楽に対する「誠実」さ。
キャラクターたちの音楽に対する姿勢だけでなく、楽器の説明一つとっても専門的なことを一般人でも分かりやすく噛み砕かれていたり、随所に作者の真面目さが滲み出る文章に好感が持てる。
その最たる例が演奏シーン。演奏前、演奏中の心理描写はプロの奏者ならではのリアリティがあり、「音」に対する説明も非常に丁寧で、音楽はさっぱりな自分でも臨場感が伝わってくる。
時々主人公の口を借りて日本の音楽界の偏見への愚痴が入っているのはご愛嬌w
また、音楽関係の話を抜きにしても、王道ではあるが泣かせどころや盛り上げどころ、しっかりツボを押さえたストーリー構成に、大人しい性格から四人の中では目立たない涼葉にまでしっかりスポットを当てるソツのなさなど、新人賞らしからぬ完成度。
とても面白かった。今年読んだ新人賞作品の中では一、二を争う面白さ。