いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「秋葉原ダンジョン冒険奇譚1」中野くみん(オーバーラップ文庫)

秋葉原ダンジョン冒険奇譚 1 (オーバーラップ文庫)
秋葉原ダンジョン冒険奇譚 1 (オーバーラップ文庫)

秋葉原ダンジョン――それは秋葉原のラジ館跡地に突如出現した新興ダンジョンである。
ダンジョン内部はマナに満ち、銃火器・精密機器が作動せず、魔法が存在する摩訶不思議な空間。モンスターが闊歩し、危険と隣あわせなさまは、まさに「ファンタジー」であった。そのダンジョンに新たな発見とスリルを求める”冒険者”たちは、日がな探索に明け暮れていた――。
「走れ、走れぇえええええ、捕まったら終わりだぞッ!」
主人公祥真(ショウマ)と莉央(リオ)は、夏休みを利用しダンジョンに潜る高校生。これは2人のひよっこ冒険者が、小さな出逢いを切欠に、伝説の冒険者へと登り詰めるささやかな第一歩。秋葉原を舞台に、日常とファンタジーの交錯する新感覚ヒロイックサーガ、開幕――。

オーバーラップ文庫キックオフ賞<銀賞>受賞作



現代の都市に突如現れたダンジョンで高校生冒険者の祥真と莉央は、アラブの国の姫と従者に出会う。
迷宮街クロニクル』(GA文庫)にかなり近い世界観だが、あそこまでのシビアさはなくどちらかと言えばコミカル路線。
ダンジョンを取り巻く様子(他の冒険者の様子や内部のルール、外部との関係性など)には曖昧な点がいくつもあってもっと詰めてほしいところではあるが、ダンジョン内部の様子や戦闘の描写は上手くて読みやすい。また、会話も軽快。天然、オタク、素直、堅物と個性がバラバラなパーティーメンバーの掛け合いが楽しい。
その中で最も印象に残ったのは、男装の麗人で堅物・クリスハート。
日常パートではその堅さゆえに弄られ役で笑いを提供し、男装がばれた後の仕草の可愛さはかなりの破壊力。ラストバトルでは最後まで主人公と一緒に戦う。と、どう考えてもヒロインポディションなんだが……この表紙はどういうことなの?
この表紙で姫様がヒロインじゃないとは驚きだ。恋愛フラグが立たないどころか、師匠のツンデレボッチさん(脇役)より存在感が無い。が、頑張れアーシェラ。
金賞作と比べてしまうと一枚二枚落ちるが、普通に面白かった。主人公の心の傷に対して色々な伏線を張っていったので、今後はここがメインになるのかな。