いつも月夜に本と酒

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「隣人は真夜中にピアノを弾く2」陸凡鳥(ガガガ文庫)

隣人は真夜中にピアノを弾く2 (ガガガ文庫)
隣人は真夜中にピアノを弾く2 (ガガガ文庫)

19年前に逃亡した悪魔ヴィクトル・デュヴィヴィエが見つかったとの報を受け、バドとリッチはツンドラの雪原と原生林に覆われた銀世界へと赴く。デュヴィヴィエは、大悪魔にも引けをとらない戦闘力を持つ大物だ。だが、捜し当てた彼は、悪魔としての能力を失っていた。彼の身に一体何が起こったのか? そして、確保したのも束の間、ひとりの男によってデュヴィヴィエを奪還されてしまう。炎を操る能力を持つその男は、街を支配する自警団の首領だった。やがて、バドとリッチはひとりの悪魔を巡る自警団たちの覇権争いに巻き込まれていく。


ラノベレーベルとしては大変珍しいガチのハードボイルド作品、まさかの続編。
紫煙と硝煙の匂いに加え、爆炎が追加されて多少は華やかさが……出てないな。それもそのはず、驚きの女性キャラゼロ(上司のレイは一応女性だけど、電話でしか出てこない)。本当におっさんしか出てこない。他レーベルなら強引に女性キャラを足してサービスシーンを入れそうなものだが。流石はガガガ文庫だ。
さて、今回のバドとリッチのお仕事は、裏切り者の大悪魔の追跡。しかし、その二人も追われる悪魔も脇役だった。
これはその悪魔の契約した一人の人間、辺鄙な土地の自警団のリーダー・タイロンの物語。
その人生は壮絶の一言。
オープニングの回想から悪魔の理不尽な力によって仲間たちが惨殺され、その事件によって人生が狂い、今回の事件でも最後の最後まで裏切りの連続。死に際には探し求めた仇からの告白まで。何故ここまで彼を痛めつけるのかと思わずにはいられなかった。不器用で無口なタイロンの最期の言葉、こんなに重くて様々な感情が入り混じった「仕方ない」は他に聞いたことが無い。
重かった。でもいい話だった。ハードボイルドらしい雰囲気も堪能できたし大満足。


あ、ちなみに主人公のバドさんは今回も役立たずでした。彼、何のためにいるんだろうね(^^;