いつも月夜に本と酒

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「神武不殺の剣戟士 アクノススメ」高瀬ききゆ(ファミ通文庫)

神武不殺の剣戟士 アクノススメ (ファミ通文庫)
神武不殺の剣戟士 アクノススメ (ファミ通文庫)

帝都剣術学校。悪を自称する清水龍人が入ったその学校は、新式蒸気機関による近代化に沸く帝都オオエドを刀剣犯罪から護る華。そして、「決闘」を教育の一環と見なす物騒な所だった! 決闘否定派だった龍人も、天才剣士星村千歳に辻斬り犯と間違われて闘う事に。人を斬らねば強さは得られない。と語り、殺す気で来る千歳。迎え撃つ龍人。だが、彼は不殺主義者で――。第15回えんため大賞特別賞。蒸気に彩られし帝都で学徒剣士が刃交える剣戟浪漫アクション!!


優秀賞二冊がコンセプトが良くても文章力が残念なのとそもそも論外な二作だったので、今年のえんため大賞はどれだけ不作なんだよと思ていたら、なんだなんだ、普通に良いのがあるじゃないですか。


帯剣を認められたまま近代化し現代になった帝都を舞台にした剣豪アクション。江戸時代のまま現代になったマンガやライトノベルがよくあるが、その明治版といったところ。史実や人物、流派は現実の名前が使われているので、近代日本史に興味があったり『るろうに剣心』を読んだ人には響く単語が出てくる。
ストーリーは、事件の顛末が分かり易すぎてそれに関係するやり取りは白々しい感じになってしまっているのが残念だが、それ以外の要素はなかなか。
まずはキャラクター。
主要キャラが七名と新人作にしては大人数であるが、それぞれに個性があって魅力があるし、所謂死にキャラもいない。特にメインの二人がいい。メインの視点となる主人公・龍人は悪人ぶった善人で気持ちのいいバカなので、彼のおバカな言動と嫌味の無さで、話の雰囲気がコメディタッチで清々しいものになている。
ヒロインの千歳は、デレていく過程が丁寧に描写されているのでいい感じにニヤニヤ出来る。それにメインヒロインが真っ当に可愛い作品は割と貴重だ。
また、アクションもいい。
説明が少なめで会話中心のそれは、スピーディーで戦っている人間の熱も伝わってきやすくて読みやすい。
飛び抜けた長所があるというわけではないが、キャラクター・コメディ・アクションと三拍子揃っていて普通に面白かった。


これが特別賞(5万)で昨日のあれが優秀賞(50万)? 有り得ない。どうなってんだ、えんため大賞