いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「青と無色のサクリファイス」綾崎隼(メディアワークス文庫)

青と無色のサクリファイス (メディアワークス文庫)
青と無色のサクリファイス (メディアワークス文庫)

北信越地方に浮かぶ離島、翡翠島。過疎化に悩む小さな島で発生した連続放火事件は、やがて一人の男の命を奪ってしまった。唯一の家族を殺され、誰にも別れを告げずにノアが島を去って十年。未解決に終わった事件を清算するため、二十五歳になった真翔と織姫の前に、不意に彼が現れる。
あの日、あの時、あの場所で、誰が親友の父親を殺したのか。三人の再会は、やがて凄惨な真実を暴いていく……。
贖罪の青い薔薇が捧げる、新時代の恋愛ミステリー。
サクリファイス』シリーズ解決編、登場!


困った。
何を書いてもネタバレになってしまいそうな気がする。ネタバレをしてしまうとこの作品の面白さが半減以下になってしまうのは間違いないから絶対に出来ないのに。



ものの見事に騙された。
仕掛けがあると分かっているのに、しかも前にも似たような仕掛けの時には途中で気付いたのに、今回は気持ちよく引っ掛かった。犯人そのものには驚きはなかったが、sideBの真実には本当に驚いた。聖会堂での出来事はほぼ予想どおりだったけれども、根本的なトリックに気付けなかったのだから意味はない。
でもそのことよりも、上巻『赤と灰色のサクリファイス』からは誰もすれ違わない結末は想像できなかったのに、それを成し遂げられてしまったことが一番の衝撃。
犯人から続く負の連鎖で誰もが傷を負って、少なからず人生を狂わされているのに、結末がすれ違いでは報われない。犯人が分かってからは、トリックを確認しつつ読み返したいのに再読する気になるだろうか? なんてことを心配していたけれど、これは再読確定だ。それぞれの気持ちの行き先とトリックを噛みしめながら読み返そう。
しかし、なんてところで終わってしまうんだ。真翔の告白はどうなったのだろう。エピローグの扉絵が穏やかな表情に見えるのは気のせいじゃないと信じたい。
今作も良かった。綾崎ワールドを堪能した。