いつも月夜に本と酒

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「つれづれ、北野坂探偵舎 ゴーストフィクション」河野裕(角川文庫)

つれづれ、北野坂探偵舎 ゴーストフィクション (角川文庫)
つれづれ、北野坂探偵舎  ゴーストフィクション (角川文庫)

屋敷のどこかに眠っているはずの、一枚の絵を捜して欲しい―昔馴染みの女性の依頼で、佐々波と雨坂は、山の上に佇むある洋館に向かった。しかし館では不思議な現象が起こり、スズメ、人形、オーディオスピーカーは、佐々波に冷やかに告げる―ここから出ていけ!謎めいた人人、歪んだ愛情、嫉妬、葛藤、そして嘘…果たして二人の“探偵”は、幽霊が仕掛けた物語の結末を、得意の議論で正しく描くことができるのか―!?


ノゾミちゃんでたー……って、あれ?
聡明な美幼女地縛霊だったはずの雨坂の姪・ノゾミが、ユキのところに現れるという衝撃のオープニングからスタートしたものだから、前回の思わせぶりなラストも相まって、ノゾミが話の中核を担うのかと思っていたのに、、、「メインキャストになるべきだ」って本当にそのままの意味だったの……か?


それはともかく今回は昔馴染みの女性作家の依頼で古い洋館へ行く話。
随分とオカルト色が強くなったのが印象的。これまで出てきた幽霊のちょっとした能力とは一線を画す大規模な心霊現象に少々戸惑った。これも物語の核心「紫色の指先」に近づいている証拠かな。
それでも、切なくて泣きたくなる優しいストーリーは相変わらずで、何とも言えない温かみのある読後感は最高。
ただ結末は良かったのだけど、今回はストーリーテラー雨坂がほとんど寝ていてたのが不満。話は佐々波と依頼者の作家のやり取りで進み、彼女が要領をなかなか得ないので、中盤は読み解くのがなかなか難しい。それに佐々波と雨坂の問答が面白いシリーズなので、そこを削られてしまって楽しさが半減したような残念な気持ちにもなった。
それでも雨坂先生が最後の最後にやる気のある&気になるフレーズを出してくれたので、次は二人の活躍に期待できそう。