いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「神さまのいない日曜日 IX」入江君人(富士見ファンタジア文庫)

神さまのいない日曜日IX (ファンタジア文庫)
神さまのいない日曜日IX (ファンタジア文庫)

「私、死んじゃったんですね……」
アイは、土曜の朝に死んだ。ユリーも、傷持ちも、ディーも、ウッラも、それぞれがアイの死を受け止めた。
そして、皆が思った。
「アイ、キミは、これからどうするの?」
死者として埋葬されるのか、このまま在り続けるのか……。
アイは待っていた。脅威なき世界の魔弾となったアリスと、悪なき世界に舞い降りた魔女の娘を――。
世界の終わりに出逢った少年と少女。ふたりは奇跡を起こせるのか――。 墓守アイの願いの物語。ついに完結。


最終巻なのに主人公が死んだところからスタートなんて。
でも、自分が死ぬことで死について考えられるのが、このシリーズの良いところなのかもしれない。
そんなわけで、最後まで悩みに悩んでそして動くアイちゃんと、それをハラハラしながら見守る周りの人達(+読者)という構図のままなことにちょっとホッとしつつも、悩んでいる時のアイから出てくる言葉がずっと「ごめんなさい」だったには堪えた。あの人の迷惑を顧みずガンガン進んでいく子が、弱々しく謝る姿は死んだことよりのショックだった。
それが、遅ればせながら登場のアリスで空気が一変する。
本人の決意や行動は本気でどうしようもなく「馬鹿」と言われるに相応しいものだったけど、アイを元気に笑顔にする、それだけで許せる気がする。彼のおかげで最後にいつものアイが読めて本当に良かった。
1巻を読んだときには全く予想できなかった着地点だったけど、世界観はどんどん複雑怪奇になっていって度々置いてけぼりにされたけど、最後まで1巻で感動した作品の雰囲気は変わらなかった。とにかく空気感を大事にして「考えるな、感じろ」を貫き通したシリーズ。そして最後までアイちゃんはべらぼうに可愛かった。