いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「海波家のつくも神」淡路帆希(富士見L文庫)

海波家のつくも神 (富士見L文庫)
海波家のつくも神 (富士見L文庫)

両親を事故で失い、田舎の一軒家で独り暮らしをすることになった高校生・海波大地。他人との関わりを避けるように暮らしてきた彼だったが、その家には、つくも神を名乗る少女・リリィが住んでいた。
彼女は、絵本作家だった大地の両親が書いていた物語に登場する少女だという。だが、その物語は未完のまま。リリィは、大地に続きを書くように頼むのだが……?
リリィをはじめ、掛軸の少女やしゃもじの爺さん、ティーカップの新婚夫婦など、賑やかなつくも神たちに囲まれた、大地の不思議な毎日が始まる――。


田舎の町を舞台にしたちょっと不思議付きハートフルストーリー。
両親の事故死に加え、自身の変わった能力のせいで他人に対しても物に対しても執着を持てなくなってしまった少年・大地。そんな彼の凍った心が、家に居つくつくも神たちや新たなクラスメイト達との交流を経て、少しずつ溶けていくという物語。
物語の核となる主人公・大地はその生い立ちゆえに暗く陰の気を発しているが、その倍以上つくも神たちとクラスメイトが明るく陽の気を放っているので、気分が沈むことなく楽しく読める。
その内に付喪神ヒロインのリリィが大地の心に深く入り込んでくるようになると、大地の心境変化にホッとすると同時に心が温かくなる。
素直に「良かった」と思える話だった。大好きな『カラクリ荘の異人たち』に似ていたのも、そう思える一つの要因かもしれない。
ただ、主人公の生い立ちが複雑なのとクラスメイト+付喪神の登場人物の多さで、キャラクター説明と状況説明に追われている部分があるので、物語の部分が少々薄めなのが物足りなさを感じさせる。
続きがあるのならこれでも何の問題もないのだけど。あるのかな?



あとがきでちょっとびっくり。富士見L文庫はMW文庫のポディションを目指して創刊されたものだったのね。
レディのLじゃなかったのか。創刊のラインナップから女性向けなのかと思ってた。
じゃあなんのLなんだ?とググったら、LiteratuneとLight Novelの頭文字なんだそうな。ふーん。