いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「エスケヱプ・スピヰド 六」九岡望(電撃文庫)

エスケヱプ・スピヰド 六 (電撃文庫)
エスケヱプ・スピヰド 六 (電撃文庫)

永遠の冬の街《落地》。二十年前の戦争で《鬼虫》八番式・蜉蝣の柊が自らの生命を賭して核爆発を止めた街だ。蜉蝣の力により、今なお氷漬けのまま、その時を止めている。
叶葉たちをさらった黒塚部隊の目的地は、落地であった。氷に眠る少女・柊を目覚めさせ、蜉蝣と共に配下に置くためだ。九曜は黒塚部隊の計画の隙を突き、蜉蝣と柊を奪い取ろうとする。しかし二十年の永きにわたる眠りの中で、柊は自我を失っていた。
九番式の少年と八番式の少女、二十年の時を経た邂逅の行方は――? クライマックスに向けて加速する神速アクション第六弾!


おおう。
最終決戦を前に鬼虫たちが続々と退場していく驚きの展開。
それもただの退場ではなく、自分の信念に従って最後の最後まで力を振り絞り散っていく。
その姿はまさに燃え尽きる前の一瞬に強い光を放つ蝋燭のように眩しい。切なさや遣る瀬無さもあり温かさもある様々な感動を残していく。
中でも今回初登場の八番式《蜉蝣》の柊が大きなインパクトを残していった。
薄く綺麗な羽と極端に短い成虫の寿命で知られる蜉蝣。そのイメージ通りに儚く切なく去っていってしまった彼女だが、明るく九曜を励まし続け、かつての仲間ために死力を尽くす姿が美しかった。出来ることなら、鬼虫の中では貴重なゆるいキャラクターだっただけに、九曜だけじゃなく他のメンバーとの会話も読みたかったが。
そんな風に感動でいっぱいで大満足な巻だったが、強いて上げるなら地図が欲しかった。
それぞれがいる位置関係、特に距離が分からないので、救援の可能性や掛かる時間が不明なのが惜しい。それがわかれば戦闘にもう一段階緊張感が生まれたかも。
次回最終巻、もちろん最終決戦。登場人物が絞られたことで、一つ一つのエピソードが濃密になりそう。楽しみ。