いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「魔女は世界に嫌われる3」小木君人(ガガガ文庫)

魔女は世界に嫌われる 3 (ガガガ文庫)
魔女は世界に嫌われる 3 (ガガガ文庫)

ついに旅の目的地である旧魔導帝国へと足を踏み入れたネロとアーシェ。皇都跡地を目指して歩き続ける二人は、水と食料が尽きるころ、中継地点となる“小さな古城”にたどり着く。そこには圧政に耐えかね国を追われた人々が寄り添うように暮らしていた……。一方、“真実の書”を奪った魔女“ギルダ”を追うモーガンは、300年前にも同じ名の魔女が存在していたことを知る。さらなる手がかりを求め、モーガンもまた旧魔導帝国の地へと向かう。そして、皇都跡地ではひとりの魔女が、“その時”が訪れるのを静かに待ち続けていた……。

最終巻。って、あれ?もう終わり? 前回旅が始まったばかりだというのに。予定通りなのか大人の事情なのか……。
そんなわけで二人の旅路は一気に駆け足に。
それでも二人の危なっかしさは変わらない。いやむしろ展開が速い分、浅慮なところや警戒心の薄さが浮き彫りになってヤキモキ感はアップしている。しかも、元々の目的が死者の再生という不幸しか見えないものなので、バッドエンドに一直線に突き進んでいるようなネロ・アーシェに何度「もっと慎重に」とか「ちょっとでもいいから他人を疑ってくれ」と言いたくなったことか。
でも、この純粋に信じ抜く力が、その不幸を打ち破ってみんなが笑えるラストを呼び込んだと思うとそれまでのストレスが一気に晴れた。このラストシーンを読めたのは純粋に良かった。
一方で、駆け足になった弊害は少なくない。
今回のキーパーソンだった魔女・ギルダとアーシェの母ミドナの過去が上辺の事実だけしか語られず、ギルダがただのヒステリーのように感じられたこと。「真実の書」があまりに便利過ぎて言葉が軽くなってしまったこと。この辺りがじっくり書かれていれば、途中で首を傾げることもなければ、最後でもっと感動することも出来たのに。
少年と少女の旅の物語。色々と勿体ないところが出て来てしまったけど、底抜けな純粋さに心を洗われる良い物語でした。



最後の最後までモーガンさんはイケメンだった。