いつも月夜に本と酒

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「駅伝激走宇宙人 その名は山中鹿介!」つるみ犬丸(メディアワークス文庫)

駅伝激走宇宙人 その名は山中鹿介! (メディアワークス文庫)
駅伝激走宇宙人 その名は山中鹿介! (メディアワークス文庫)

僕こと天沢出雲は途方に暮れていた。幼馴染みの皐月早苗と超お嬢様の秋上伊織の駅伝勝負に巻き込まれたからだ。さらに僕の頭を悩ます問題がもう一つ。早苗と伊織の喧嘩をなだめながら家に帰ると、僕の家の前に珍妙な格好をした髭もじゃの大男と可愛らしい女の子が立っていた。彼らはかつて尼子家に仕えていた武将・山中鹿介とその娘の小夜だと名乗り、尼子家の末裔を捜しに地球にやってきた宇宙人だという。駅伝勝負に宇宙人、僕は一体どうすればいいんだ!?


駅伝なのに宇宙人、宇宙人なのに有名武将。どんなものが出てくるのかと期待半分不安半分くらい読んだら、普通に良い駅伝小説じゃないですか。いや、普通よりもかなり良い青春スポーツ小説だった。ただ、宇宙人なのはともかく、武将・山中鹿介幸盛である必要は全然感じなかったけどw 
まず、キャラクターたちが気持ちがいい。
少々ヘタレながらもなかなかの好青年、気配りの人な主人公・出雲の周りには、すぐ手が出たり高飛車だったり性格にどこかしら難があるものの、心根は優しい人達が集まっていて、彼らの互いに仲間を思いやるやり取りが清々しい。そこに加わる宇宙人親子も誠実を絵に描いたような人物で、常識知らずの彼らの失敗の数々が嫌味なく笑えるのがいい。
それと、肝心の駅伝の部分もなかなかの読み応え。
練習風景に専門的な単語も出てくるので作者は経験者なのだろう。練習シーンでもレースのシーンでも経験者ならではの、選手の心理が描かれている。
また、鹿介が何度か駅伝を人生に例える台詞があるが、それをストレートに表現されている本番のレースシーンは、走者の分だけ感動がある。
実直という言葉の似合う爽やかなスポーツ小説。いい読書時間でした。