いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「生ポアニキ」アサウラ(オーバーラップ文庫)

生ポアニキ (オーバーラップ文庫)
生ポアニキ (オーバーラップ文庫)

不登校で孤独な生活を送る木村ユースケは、カウンセラーの勧めで新たに設けられた『恋愛生活保護』を申請した。これで相性の良い自分好みの女の子が現れて、幸せになれる…はずだったのだが、約束の日、家に来たのは女の子ではなく、一糸まとわぬマッチョな“アニキ”だった! 一方で本来現れるはずの鳳来寺ユリは転校生として現れるも、ユースケの好みとはことごとく違う。家に住み着いたアニキ、ユースケを拒絶する転校生、そして秘密を抱えて近づくクラスメイト・松笠アザミ…。謎が謎を呼び、アニキの汗がほとばしる!果たしてユースケに恋人は出来るのか!? 全ての答えは筋トレの先にある!少年少女と一人のマッチョが織りなす健全なる物語。ハイテンション・マッスル・ラブコメここに交付!!


ベン・トー』読者ならタイトルだけでクスッと笑えるけど、一発ネタのガチムチコメディなんでしょ? それに当時はタイムリーなネタだったけど、今は時期を過ぎてしまった感もあるよなあ……なんて思いながら読み始めたら、思った以上にしっかりした下地で、しっかりラブコメも青春もしているんですけど!? バカなことを本気でやる精神は本作にも十分に発揮されていた。
読んでまず目に脳に飛び込んでくるのは、うん、まあ、そりゃあアニキだよね。
濃い、とにかく存在が濃い。文章と挿絵の相乗効果で序盤の内に圧倒的なインパクトを植え付けられる。おかげで、言ってることも行動も子供を導く正しい大人の振る舞いなのに、何故か笑いがこみあげてくるというおいしい存在に。脇役にも無表情美少女やエロいお姉さんなど、他の作品なら人気になりそうなキャラがいたのだけど、みんなアニキに喰われてた。
しかし、アニキだけではコメディにしかならない。主人公とヒロインが青春していたからこそのこの作品。
主人公・ユースケは、初めのうちはあまりにも卑屈&クズでちょっとイラッとしたのだが、アニキの指導で人として男として成長していく姿が感じられるのが良いところ。アニキの言うとおりこれは筋トレ効果なのか? 筋トレって凄いな←
ヒロインのユリは、ボーイッシュで素っ気ない表面と、女の子らしい細やかな内面のギャップが可愛い。それと何より偏見を持たない素直さがいい。この子でなければユースケの相手は務まらないであろう。ジャンル違いだが、前作のユリより断然可愛い。で、どうして二作連続でヒロインが「ユリ」なんですか先生?
その二人、心に傷のある少年少女が次第に打ち解けあってお互いをかばい合うまでになる様子はまさに青春。そこに良いアシストをしているのがやっぱりアニキ。こういう大人が世の中に多く入ればな、なんて思ってしまう。
面白かった。コメディも主人公の成長もヒーローも一手に引き受けるアニキに惚れること請け合い。というか存在が卑怯だ!w
アニキが送られてきた謎は持越し、ヒロイン増加のフラグを立ててと、続刊への含みをたっぷり持たせて終わり方。続きを期待してもいいんですよね?