いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「ファング・オブ・アンダードッグ」アサウラ(ダッシュエックス文庫)

ファング・オブ・アンダードッグ 1 (ダッシュエックス文庫)
ファング・オブ・アンダードッグ (ダッシュエックス文庫)

負け犬にも、牙はある。
『陣』とは、この世の全てを操る命令である。それは、かつて存在した日本という国が作り出し、世界を破壊し尽くした技術であり、「漢字」を体に入れ、組み合わせることで様々な力を発揮するもの。
しかしながら、人々は一度世界を滅ぼした技術である陣を警戒しそれを利用する者たち――陣士を敵視し、暗殺の対象としていた。
それらを理解してもなお、陣士を目指す少年アルク。その心には、剣豪一族・府津羅の末裔である自分自身と、最強の剣士である兄との決別があった。そして相方・ユニと共に陣士選抜トーナメントに挑むことになったアルクの前に立ちはだかった者とは…! ?
若きアンダードッグが牙を剥く! 無頼派和風バトルアクション!!


剣豪一族の出来そこないの弟が兄を見返すために力を得ようとする和風ファンタジー
完全硬派なアクションものかと思いきや、平時は積極的に遊んでいて意外とコメディ寄り。アサウラ先生のデビュー当初の硬派なガンアクション路線(但し百合は除く)と、コメディで培った財産が融合したような作品。
ファンタジーなのにくっそ旨そうなハンバーガー描写があったり、マッチョがバカやってたり、白粉先生の弟子かのような受付のお姉さんが出てきたり。彼女の所為か腐キャラではない「白妙」が「白粉」に見えてしょうがないw
キャラクターで言えばメインヒロイン? 狐耳のユニも面白い存在。自称男の子だけど見た目や仕草は完全に……って、もう口を滑らしてるじゃないか。耳や尻尾の感情表現が実にあざとくて良いですね! 耐性が無いアルクがそれに気づいた時の反応が今から楽しみ。でも、ヒロインで言うならヤンデレヒロイン化しそうな、どこかフルメタ・アナザーの菊乃を思わせる 円 の方が魅力的だったり
一方で、ストーリーは思いっきりシビア。
俺TUEEE全盛のライトノベルに逆行するヘタレ主人公・アルクを筆頭に、弱い者はとことんまで突き落していく。その弱い者、虐げられてきた者が死に物狂いで戦う姿、あらすじ初めの謳い文句「負け犬にも、牙がある」を体現する姿が熱く、美しい。俺TUEEEの爽快感も悪くないが、やっぱり主人公は成長していく姿を見せてくれないと。
予想外の軽さにちょっと面食らったが、コメディとシリアスのメリハリがしっかり効いていて面白かった。