いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「思い出のとき修理します3 空からの時報」谷瑞恵(集英社文庫)

思い出のとき修理します 3 空からの時報 (集英社文庫)
思い出のとき修理します 3 空からの時報 (集英社文庫)

穏やかな交際を続ける明里と秀司。ある日「秀司の時計店を女が手伝っている」と教えられた明里は、店で骨董店の娘・郁実と出会う。東京での仕事を辞めて帰ってきたという彼女は、商店街のお祭り準備で秀司が不在がちの今だけ、店番をしているのだという。自分と境遇の似た彼女に共感を覚えつつも、秀司との関係に少しだけ不安を感じて…。切なく温かく、心を癒やす連作短編集、シリーズ第3弾。

連作短編形式の少し不思議付きハートフルストーリー第三弾。



今回もしみじみと良かった。
恋のライバルが出て来て明里が揺れても、秀司の方は全く揺るがないので、そういったドキドキは無いかな。逆にそのライバルの嫌な面ばかりが目立つことになって、気の毒に思えてきてしまうくらい。
でも、そんな盤石の二人だったから、あまりお付き合いしたくないタイプの登場人物が多かった今作の四話が落ち着いて読めたのかも。とにかく二人の人の良さに救われたり、心が温かくなる。
どんなに怪しい人や怖そうな人が現われても、まずは信じるところから始める明里と、全く先入観や偏見なく相手と接する秀司。この姿勢に心を打たれる。
そして、明里が何かとお節介をやいて事を動かし、秀司がそれを綺麗に収束させる。動の明里と静の秀司といった感じの二人の活躍で、完全なハッピーエンドでなくても、必ず明るいところに着地する終わり方にホッとする。どの話も何とも言えない温かな読後感。
さて、その読者にほっこりをくれるお二人さん。精神的には大きな進展は無かったものの、他人の家族の問題に触れることで自分のことを考える、否応なく「結婚」を意識させる話の構成になっている。辛い想いをしてきた明里には是非とも幸せになってもらいたいが、もう一山くらいはありそう。
今回は主に明里の家族の問題だったので、次は秀司の方かな?




手水舎(ちょうずや)に二度も(てみずしゃ)とルビがふってあったので、気になってググってみたら(てみずしゃ)でも間違いではないらしい。しかし違和感は半端ない。