いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「ファーレンハイト9999」朝倉勲(ダッシュエックス文庫)

ファーレンハイト9999 1 (ダッシュエックス文庫)
ファーレンハイト9999 (ダッシュエックス文庫)

アニメ、漫画、ゲーム、ラノベ、フィギュア――。すべてが規制の対象となった現代。警視庁に新設された“オタクを取り締まる機関”焚書課の高校生捜査官・維刀臥人は、中学生の先輩・奏手イリナとともに違反者を検挙し続けていた。
だが、隠れオタクである臥人はその裏で焚書課を裏切っていた。規制に反逆する白亜の聖堂騎士・エルガットとして単身政府に抵抗していたのだ。
そんなある日、臥人はレディ・パルムという女性から反政府組織の無差別テロの阻止を依頼される。オタク文化規制撤廃を訴える組織「東のサン・キュロット」が核武装している、というのだが……!?
最強の高校生捜査官が躍動するスタイリッシュスパイアクション、開幕 !

第13回SD小説新人賞大賞受賞作。



最近の新人賞の大賞作品には珍しく、完成度ではなく「光るもの」で選ばれたタイプの大賞だと思う。
スタイリッシュスパイアクションだと思って読むとスタイリッシュにもスパイにも首を捻るが、痛快アクションなら納得の内容。
冒頭、オタク文化が規制されることになった経緯にリアリティがあって、その後の話の雰囲気も割と緊張感があったので、これはシリアス寄りの話なんだろうと読み始めたら、度々ズッコケる結果に。
あの真面目な説明の後にこんなトンデモ設定とぶっ飛んだ話が出てくるとは思わなんだ。特に主人公の経歴と能力は中二病を通り越して最早ギャグかと。
でも、主人公が異次元に強いおかげで痛快なのは間違いない。
そして、アクションシーンの勢いと派手さは本物。色々なものを度外視して魅せることに一点集中したエンターテインメント性の高い作品で、細かいことは気にすんな!とギャグマンガに近いノリで読めば楽しめること請け合い。
オタク規制以外にも変なところにだけリアリティがあってアンバランスな感じは否めないが、アクションは本当に良かった。あとがきに危うくペンネームが「アサクラ」になりかけたというエピソードが語れているが、アサウラ先生のような痛快バカアクションが似合いそうな作風なので、これの続きよりはそういったタイプの話が読みたいかな。