いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「ファング・オブ・アンダードッグ2 烏の嘴」アサウラ(ダッシュエックス文庫)

ファング・オブ・アンダードッグ 2 烏の嘴 (ダッシュエックス文庫)
ファング・オブ・アンダードッグ2 烏の嘴 (ダッシュエックス文庫)

悪しき者達を倒すために世界を巡る陣士、アルクとユニ。新たな任務は疫病で封鎖された城壁都市ヤリゼイサの調査だった。
アルクは素性を隠して都市に潜入する際、少女の命を救う。都市の住民であった少女は恩人の剣士としてアルクに淡い想いを抱くのだが…ある時、彼が事件の犯人だと聞かされ、しかも嫌悪する陣士であるという真実を知ってしまう。そしてこの時、反陣士組織「烏」の精鋭、円と斛はアルク殺害のため、都市に侵入を果たしていた……。
助けるべき都市の群衆、烏、そして事件の真犯人……全てを敵に回し、孤立無援となったアルクは誰を倒し、誰を救うのか……!? 死闘に次ぐ死闘、時々耳かき。無頼派和風バトルアクション第2幕!

二巻は、晴れて陣士となったアルクたちの初の仕事風景。疫病騒ぎの渦中にあるサイゼリヤヤリゼイサの街に調査と救出で派遣される。
前半はコメディ、というよりラブコメモード。
アルクに懐く現地の少女に、相変わらず性別不明のユニ、そこに敵対する組織「烏」の円まで加わって、アルク君束の間のハーレム状態に。ぼっち力の高いアルクの初心な反応もなかなか面白かったが、一番の驚きは円。1巻ではヤンデレヒロイン化しそう雰囲気だったのに、真っ当にヒロインしてる!? しかも、これはかなり可愛いぞ。
また、このラブコメパートには作者の武器「食事描写」に続くかもしれない新たな爆弾が仕込まれている。
確かに「耳かき成分増量中」というおよそ文庫の帯とは思えない一文があるが……誰がここまでやれと言った!w
主にヒロインに勘違いさせるために使われる、そういう行為を連想させる耳かきシーンはいくつも読んできたが、本番を超えてしまいそうな濃密な耳かき描写を読んだのは初めてだ。うん、これは間違いなく馬鹿ですね(最大級の褒め言葉
後半は一転してバトルパート。
戦闘モードにスイッチが入った瞬間に雰囲気はガラッと入れ替わる。
先陣を切った烏の姉弟の戦闘開始直後からいきなりのピンチ。そしてその後もずっとピンチ。常にギリギリの状態で繰り広げられる戦闘はかなりの熱さ。
そんなひっ迫した状況が続くので、ストーリーも当然のように思いっきりシリアス。後味が苦めなラストまでずっと、戦闘も状況も立場も“陣士”というものの何たるかを見せつけてくる話だった。
遊ぶところは全力で遊んで、真面目なところは激しく熱く。メリハリが効いている作品はやはり面白い。