いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「ファング・オブ・アンダードッグ4」アサウラ(ダッシュエックス文庫)

ファング・オブ・アンダードッグ 4 (ダッシュエックス文庫)
ファング・オブ・アンダードッグ4 (ダッシュエックス文庫)

総本山が猛攻を受けてから一ヶ月。復興作業に従事していたアルクは3つの目的のため、休暇を取ることに。1つ目は刀を研ぎに出すこと、2つ目は兄・頼雅に会うために里帰りをすること、そして3つ目は、ソバが遺した言葉にあった村・ドトルに行くこと。
相棒のユニと。なぜか同行する「烏」の円と共にドトルを訪れたアルクは、そこで「府津羅」の名に反応する兄妹と出会い、襲撃を受ける。アルクを鬼の子と呼び、復讐を叫ぶ二人を斬るが、同時に自らの出生の秘密を知る。
胸に抱いた疑念の答えを求め、アルクは再会した兄に問う。自分は何者なのか?そして兄は――。
無頼派和風バトルアクション、絆を問う、クライマックス!

先輩であり、無二の友であり、心の支えであったソラを失った失意のアルクに、追い打ちをかける様に明らかになる彼の秘密とは!? というアルクの物語のクライマックスに相応しい自分を見つめ直す第四巻。
自分の出生を知り、自分の成長を知り、自分がどれだけ愛されているかを知る。負け犬だった過去の自分と決別する様子が描かれる。……と書くと格好良いが、その実態は、
ユニ(自称男の子)、円(女の子)、兄(正真正銘男)による正ヒロインの座争奪戦だった。何だこれはw
兄さん、弟好き過ぎるだろう。不器用だけど一途とかまさにヒロインじゃないですか。おまけに小柄で美顔だし。
円は前半の攻勢が可愛かった。控えめながらも感情を表に出してよく喋っていた円の姿にどれだけアルクに懐いているのかが分かってニヤニヤしていしまう。耳かきは卑怯だw なんかエロいのに円には純朴な可愛さが出ている素晴らしいシーン。
そして美味しいところだけ持っていくユニ。これまでの時間があってこその振る舞いなのは分かっているけど、ちょっとズルい。
前回のデカ物とは違う個対個の死闘があり、アルクを中心に登場人物たちの成長の跡が見える、クライマックスらしい激しさと頼もしさと少しの寂しさが味わえて満足。でもそれに加えて、キャラクターたちの仲の良さにどこか犬がじゃれ合っているような、自然と顔がほころぶ不思議な幸福感があった。
第二部を期待せずに待とう。(マンガ・ラノベの第一部完は完とほぼ同義語なので)