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「即興ワルツ 青遼競技ダンス部の軌跡」佐々原史緒(富士見L文庫)

即興ワルツ 青遼競技ダンス部の軌跡 (富士見L文庫)
即興ワルツ 青遼競技ダンス部の軌跡 (富士見L文庫)

成島拓海は同大学の橋本秋帆に狙われていた。彼女は拓海の長身を頼みに―共に“競技ダンス”で日本一を目指そうというのだ。さる事情から人付き合いを避けてきた拓海に、よりによって女子の手を取り笑顔で踊れだなんて!当然断るものの、諦めようとしない秋帆の真剣さに屈し、拓海は期間限定で入部する契約を交わす。優雅なイメージとは裏腹、体育会系な活動に絞られる日々を送る拓海。やがて応援に訪れた大会で、予期せず出場することとなり…。ダンスにかけるふたりたちが描く、青春と人生の心躍る軌跡。

これぞスポ根。これぞ青春。
実家では自分勝手な親たちに欺かれ軽度の人間不信になり、世話になった祖母の懇願で大学には入ったけれど特にやりたいこともなし。そんな大学一年生・拓海が主人公。そんな彼が、パートナーとなる秋帆や部活の先輩方の情熱に感化されて、真剣にダンスと向き合っていく。そんな一人の大学生の成長の物語。そしてストーリーラインは、成功と挫折と復活というスポ根の王道中の王道。
佐々原先生久々の部活ものに期待に胸を膨らませて読んだが、ここまで王道一直線で来るとは。競技ダンスという変則フォームから繰り出される綺麗な軌道の剛速球といった感じ。外見が変わってるから、中身で奇をてらう必要はないってことか。
作者の特長である軽快な地の文はラノベレーベルではないからか大人しめだったが、「――」から始まる拓海の本音の部分には出ていて、そこから大学生の若者らしさと捻くれているようで根は真面目な拓海の好青年さが感じられるのがいい。
もう一つ特筆すべきは試合の描写。
ダンスには全く明るくないので競技シーンを思い浮かべるのは難しかったが、それでも伝わってくる緊張感。一緒に踊っている気持ちにはなれなかったけれど、期待少々不安いっぱいで見守っている先輩たちの気持ちにはなれた。
そして何より、スポ根好きとしては王道でしっかり読み応えのあるスポ根が読めて満足。
まだ冒頭のシーンに繋がっていないので、続きがあるものと信じている。秋帆視点も読みたいなー(チラッチラッ