いつも月夜に本と酒

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「大正箱娘 見習い記者と謎解き姫」紅玉いづき(講談社タイガ)

大正箱娘 見習い記者と謎解き姫 (講談社タイガ)
大正箱娘 見習い記者と謎解き姫 (講談社タイガ)

新米新聞記者の英田紺のもとに届いた一通の手紙。それは旧家の蔵で見つかった呪いの箱を始末してほしい、という依頼だった。呪いの解明のため紺が訪れた、神楽坂にある箱屋敷と呼ばれる館で、うららという名の美しくも不思議な少女は、そっと囁いた――。
「うちに開けぬ箱もありませんし、閉じれぬ箱も、ありませぬ」
謎と秘密と、語れぬ大切な思いが詰まった箱は、今、開かれる。

新聞記者見習いの男装の少女・紺と、「箱娘」と呼ばれる神楽坂の豪邸に住む謎に満ちた少女・うららが織りなす短編連作形式の大正ロマン小説。新聞記者の紺が追う事件をうららに相談に行くことで物語が進んでいく。
大正時代が持つ近代化の過渡期にある世間の高揚感と、でも女性にはまだまだ開かれていない閉塞感。そこに「箱娘」の存在がもつミステリアスさが加わって、独特の雰囲気を醸し出す。
そこで謳うのが「女性の自由」。
女だからという理由で、虐げられたり不幸に見舞われた女性が多く出てくるので、どの話も後味苦め。また、その主張が強すぎて時々怖さすら感じる。
紅玉さんの作品の中で、女子寮や宝塚のような少女だけの世界の物語では女性の怖い一面を強烈に描く作品があるが、本作は閉じられた世界ではないのにそれに似た毒を持つ。
作者らしい「女性」を描く物語で、時々ゾクっとさせられつつも作者らしい雰囲気を味わえたので満足。


ちなみに帯には大正ロマンミステリーとあるが、ミステリーの要素はない。強いてい言うなら第四話に刑事が出てくるくらい(そしてその第四話は箱娘の不思議要素の方が強い)。いい加減ミステリーする気がない作品にミステリーって銘打つの止めようよ。