ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 10 (GA文庫)
理知を備えるモンスター『異端児(ゼノス)』との邂逅も束の間、ベルはウィーネと引き離されてしまう。懊悩の日々に埋もれるベルだったが、ウィーネにも魔の手が迫ろうとしていた。 そして、
「武装したモンスターの大移動を確認! ギルドは討伐任務を発令します! ! 」
暴走する『異端児』によって賽は投げられた。引き鉄となったのは暴悪な狩猟者達、代償は都市の全派閥を巻き込む動乱。激動のオラリオで少年は決断を迫られる。憧憬と怪物、現実と理想、英雄と罪人。人類とモンスターの狭間で、ベルは──
「君は、本当に愚かだな……」
これは少年が歩み、女神が記す、──【眷族の物語(ファミリア・ミィス)】──
人間の悪意を発端に自分達とは夢の真逆の道を進み出してしまった『異端児』たち。ベルは彼らを、そしてウィーネを救えるか!?な第10巻。
9巻の話の流れから重い話になることは重々承知していたが、ここまで後味の悪いものが出てくるのは予想外。
このシリーズの空気的に、なんだかんだで最後はベル君がスカッと晴らしてくれるんじゃないかと、心のどこかで思っていたんだが。いや一応バッドエンドではないけどさ。むしろ体裁だけならハッピーエンドか。ハッピー感はゼロだけど。
でも「ベルの成長」というこのシリーズのメインテーマにとっては、とても大事なエピソードだったことは間違いない。
それはベルが憧れる『英雄』とは何なのか。
格好良くもなければ清廉潔白でもない、時には正義ですらない。ベルがもがき苦しむ姿を通じて『英雄』の真実の姿を示す物語だった。理想と現実のギャップを、自分の理想を追うことの厳しさをこれでもかと知らしめられ、それでもその道を進む覚悟があるのかと問い続けられたベル。表紙の血塗られた道を行くベルの姿はこういうことか。
フェルズとエイナに救われて完全な挫折までは行かなかった気がするが、大きな転機になることは疑いようもなく、この先ベルがどんな道を進むのか、周りとの関係がどう変化するのか。先が読めなくて続きが楽しみだ。決着しなかった異端児たちの行く末も気になる。
とりえあず次はベル君汚名返上の話かな? 神ヘルメスは何を用意してくるのやら。