いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「君と時計と雨の雛 第三幕」綾崎隼(講談社タイガ)

君と時計と雨の雛 第三幕 (講談社タイガ)
君と時計と雨の雛 第三幕 (講談社タイガ)

大切な人の死を知る度に、時計の針は何度でも過去へと巻き戻る。「親友や家族が世界から消失する」というあまりにも大きな代償とともに。幼馴染の織原芹愛の死を回避したい杵城綜士と、想い人を救いたい鈴鹿雛美だったが、願いも虚しく残酷な時間遡行は繰り返される。雛美が頑なにつき通していた「嘘」、そしてもう一人のタイムリーパーの存在がループを断ち切る鍵となるのか!?

雨の雛ってそういう意味か。
第三幕は雛美の秘密に迫るのがメインの話だった。タイトルと前回の綜士の死から雛美視点の物語になると予想していたが、あくまで主人公は綜士ってことね。
相変わらず出てくる古賀の名前と、どこまでも頑なな芹愛の態度にヤキモキする前半を過ぎると、そこからは怒涛の種明かしラッシュだった。と言っても千歳の仮説だが、大きな間違いはないだろうと思われる実質解答編。現実世界を生きる彼らにはぶっ飛んだ状況ながら、千歳先輩の説明は謎の説得力があるから納得できてしまうんだよな。今回一番の驚きだった雛美の秘密も意外とすんなり入ってきた。
ついには今まで登場人物がそれぞれに勘違いしていた相関図の矢印の方向まで整理され、ここまで明かしたらあとは「死」を回避するだけでは?と思っていたら、、、まあ、そりゃそうだ。もう一幕残っているもの。しかし、このラストは……(絶句)
種明かし中に示されたタイムリミットに加えて、衝撃のラストがもたらした最大の窮地が重なって、最も苦しい状態で最終幕がスタートするが、果たして笑顔のラストはあるのだろうか。
先輩の手紙が鍵になることは分かるが、第四幕のタイトルが『雛の嘘』。まだ嘘があるというの?