いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「ヒイラギエイク」海津ゆたか(ガガガ文庫)

ヒイラギエイク (ガガガ文庫)
ヒイラギエイク (ガガガ文庫)

中学二年生、夏休み。あの村で僕、荻原出海は仁科美音と出会った。望んでいたはずの静かな夏とは違う、騒がしくて賑やかな日々。入道雲、打ち上げ花火、夜空に輝く天の川。あの夏のぜんぶの景色に君がいた。あのときの僕は、この一瞬が永遠に続くと思っていた……けれども時間は未来への一方通行で、やり直しなんてありはしない。だからこそ、僕は未来へと走り続ける。どれだけの時間が過ぎていっても、どれだけの距離が離れても、もう一度君に会いたい夏があるから――。第10回小学館ライトノベル大賞・優秀賞受賞作品。

離婚協議中の両親の元から夏休みだけ田舎の村の叔父の家に預けられることになった少年・出海と、その村で出会う同い年の四人の少女の物語。
ボーイミーツガールでひと夏の思い出。大好物のジャンルである。そこに排他的な村の雰囲気に秘密が多い村のしきたり、各所に散りばめられたタイムリープの気配が加わって否応なしに期待が高まる。
……ところまではよかったのだが、特に盛り上がることもなくそのまま萎んでいった。消化不良の線香花火を見ているようだった。
この設定ならもっとドラマチックに出来ただろうに。考えた設定の説明だけしてほとんど使わずに放り投げて入った感じ。それでいて肝心のタイムリープの部分があやふやなのが全てを台無しにしている。事前の姫の説明とその後の行動と起きる事象に矛盾しかないんだが。未来に飛んだじゃないのか? 時空の狭間のような所にいる設定なの? うーん、わからん。
ひと夏の思い出の部分は悪くなかったが、SFの部分がお粗末だった。それにオチも圧倒的に弱い。終わり良ければ全て良しばかりではないけれど、終いの悪い作品はどうしたって印象が悪い。