エースナンバー 雲は湧き、光あふれて (集英社オレンジ文庫)
県立三ッ木高校に赴任した若杉は、野球部の監督を任せられることに。初戦敗退常連チームに、野球経験のない素人監督。だが今年の選手たちは、二年生エース月谷を中心に「勝ちたい」という想いを秘めていた。やがて迎えた夏の甲子園地区予選。初戦の相手は名門東明学園。弱小チームと青年監督の挑戦が始まる……!!
少年たちの熱い夏を描いた涙と感動の高校野球小説集。
前作「雲は湧き、光あふれて」の正当な続編。前作の一、二話に出てきた人たちのその前やその後を描く短編集。
今回は弱小高校の三ツ木高校をメインに据えた構成になっている。
高校野球が題材なので若者たちの青春ももちろんあるが、それよりも歳の近い素人新人監督の苦労に共感してしまった。
以下各話事
監督になりました。
内容：野球経験のない若手教師が監督に。
この監督、前の話を読んで素人ながらに熱血漢かと思っていたら、座右の銘は「中庸」とか言っちゃう人だったの？ 初めはあまりのやる気の無さに完全に別人かと思って、選手たちの名前が何人か出てくるまで前作と同じ舞台だと気付かなかったぐらい。
流される形ではあったけれど次第に熱が入っていく若杉先生の、要領の良さに感心し、生徒への情熱に感化される話だった。
甲子園からの道
内容：高校野球担当になった新米女性記者、甲子園編。
若手の記者が状況に振り回されながらも頑張っている話なのは間違いない。が、その苦労よりも記者の品の無さばかりが目に付く。泉さんの苦労の一端としてセクハラなんかもしっかり描写されているのが、悪い方に出たのかも。
今後も記者に共感することはまず無いだろう。毎年毎年偏向報道とプライベートを無視した報道にうんざりしているからからね、仕方ないね。
主将とエース
内容：新チームになった三ツ木高校の話。
キャプテンになったエースと、過去のいざこざから一度止めて戻ってきた天才ショートの話。
ショート笛吹くんの葛藤が話のメインだったのだけど、それよりも第一話の主役・若杉先生の苦労に共感。
飛び抜けて上手いがいい加減な選手と、努力は人一倍だけど下手な選手のどちらを重用するか。勝利へのこだわり、チームの士気、選手個人のモチベーション、教育としての高校野球。色々なことを加味して、その中から一つの答えを出さなけばならないことに眩暈を覚える。
