いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「風歌封想」綾崎隼(メディアワークス文庫)

風歌封想 (メディアワークス文庫)
風歌封想 (メディアワークス文庫)

拝啓、舞原和颯様。
風の便りであなたのことを聞きました。


8年前に別れた恋人に一目会いたい。
夢に破れ、長く陰鬱な後悔の時を経て30歳になった彼女は、節目の年に開催された同窓会に出席する。
かつての恋人との再会は叶わなかったものの、友人に促され、彼女は自らの想いを手紙に託すことにするのだが……。
きっと、誰にだって忘れられない恋がある。
往復書簡で綴られる『風』の恋愛ミステリー。


花鳥風月シリーズ久々の第六弾は、8年前に別れた三十路の男女が文通する形で進んでいくラブストーリー。奇数話は舞原和颯に宛てた手紙、偶数話は藍沢瀬奈に宛てた手紙の内容が綴られる。
恋愛小説でありながら毎回読者を騙す仕掛けが組み込まれているこのシリーズだが、今回はかなり分かりやすかったかと。自分は第三話で違和感を覚えて第五話で確信した。手紙同士が噛み合ってる感じがしなかったのでね。
でも、仕掛けが分かったからと言ってすれ違いの切なさが薄れるわけではないのが綾崎作品。
特に今回は手紙がというツールが実に良い雰囲気を醸し出している。必要以上に丁寧になってしまう口調と書く時は本人を目の前にしていない為に赤裸々に書けてしまう本心のギャップや、お互いの感情が直接ぶつからないもどかしさなど、手紙だからこその表現が綺麗でその分寂しさが募るストーリーだった。その上、投函したかどう分からない書き方や、表紙や各章の扉絵で度々紙を破る絵が描かれていたりするのも切なさを助長する。
そして迎えた最終章は……そこを言うのは野暮だね。
大好きなシリーズの久々の新刊を堪能できて満足。「月」の構想があってシリーズは続くようなので、次を気長に楽しみに待とう。



綾崎作品のもう一つの楽しみがクロスオーバー。
今回も見たことのある名前がちらほら出てきたが、レッドスワンの世怜奈さんが夢を叶えていたことが一番の驚き。優雅はどうなったんだろう。
七虹さんの出演率かなり高くないか? お気に入りなのかな。