いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「踊り場姫コンチェルト」岬鷺宮(メディアワークス文庫)

踊り場姫コンチェルト (メディアワークス文庫)
踊り場姫コンチェルト (メディアワークス文庫)

全国大会を目指すべく、県立伊佐美高校吹奏楽部に入部した梶浦康規。
真面目で正確な演奏しか取りえがない康規が命じられたのは、天才的な音楽の才能を持ちながら、破滅的な指揮を振りつづける問題児「踊り場姫」藤野楡を、まともな指揮者に生まれ変わらせることだった。
周囲に関心がなく自分の思う指揮を振る楡には取りつく島もなく、演奏は空回りを続けるばかり。
どうすれば、彼女と周囲の歯車とを噛み合わせることができるのか。コンチェルトを奏でることができるのか……。
青春の踊り場にいる彼女と僕の、吹奏楽ストーリー。

主人公のお堅い少年と天才音楽少女の交流を描いた作品。
自由奔放だけど危うい雰囲気も持つ少女と、それに振り回されながらも彼女の夢が叶うように一生懸命頑張る少年の様子は間違いなく爽やかな青春小説。
そう、そこは悪くはないんだが……。
その二人に集中し過ぎた所為で吹奏楽である意味が薄れ、部活動に至ってはマイナスになっていた。
他の部員(主に先輩方)も裏では練習も努力もしているのは分かっている。でも、そこは全然描写されないから、コンクールは天才の才能におんぶにだっこ、その天才のお守りは後輩に丸投げという、ただの他力本願な人たちとしか映らない。
また、吹奏楽小説は結構好きで他にもいろいろ読んだけど、それらに比べると演奏シーンはかなり簡素で感動はない。そもそも部員たちの努力を知らないと感動も何もないのだけど。
センシティブな少年少女の話なので青春小説には間違いないが、吹奏楽小説として部活ものとしての青春を期待していたので、それらが味わえなくて大変物足りない。