いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「響け!ユーフォニアム3 北宇治高校吹奏楽部、最大の危機」武田綾乃(宝島社文庫)

響け! ユーフォニアム 3 北宇治高校吹奏楽部、最大の危機 (宝島社文庫)
響け! ユーフォニアム 3 北宇治高校吹奏楽部、最大の危機 (宝島社文庫)

猛練習も日常となり、雰囲気もかなり仕上がってきた矢先、北宇治高校吹奏楽部に衝撃が走った。副部長で、部の要と言える三年生のあすかが、全国大会を前に部活を辞めるという噂が流れてきたのだ。母親との確執から、受験勉強を理由に退部を迫られているらしい。さらには、楽器に対する複雑な心境をあすかは久美子に打ち明ける。はたして大会の行方は――。“吹部”青春エンタメ小説の決定版!


ついに全国大会へ! これはさらなる猛特訓かと思ったら、早々にあすか先輩の退部問題が持ち上がり、黄前家でも姉が引き籠ってと問題が目白押し。
そんなわけで3巻は親の過干渉に苦しむ子供の話をメインに、揺れ動く久美子の心情を繊細に描く作品となっている。個人的な好みから言えば吹奏楽一直線!でやってくれた方が良いのだけど、また練習風景をがっつりやったら2巻の焼き増しになるから仕方がないか。
1巻でもそうだったけど「やな感じ」を表現するのが上手い。感受性の豊かな久美子が大人と状況の板挟みに遭って、何もできない自分に落ち込んだり息苦しく感じたりする様子がダイレクトに伝わってきて、読んでるこちらまで遣る瀬ない気持ちになる。青春の熱は薄れても、思春期って感じが強くして2巻とは違う青春感があった。
こんな風に書くと重い話と思われそうだが、キャラクター小説の側面もちゃんとあって適度に軽い。一押しは圧倒的に可愛くなってる麗奈。久美子愛と滝先生愛が溢れだしていてクールなイメージから想像できない突飛な行動がちらほら。良いニヤニヤをいただきました。
そして忘れちゃいけない吹奏楽
泣かせ上手だなあ。演奏シーンでもグッとくるものがあるけど、やっぱり結果発表の涙だ。今回こそ練習風景はろくになかったけど、これまでの苦労を一緒に味わってきた気分になっているから思わず貰い泣きしてしまう。
短編集と番外の立華編はあるけど本編はここで終わり? 二年生編とか出ないのかな?