いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「廻る素敵な隣人。」杜奏みなや(メディアワークス文庫)

廻る素敵な隣人。 (メディアワークス文庫)
廻る素敵な隣人。 (メディアワークス文庫)

「ありがとうね、ヒーローくん」幼い頃に助けた女の子が忘れられず、ヒーローに憧れるわかりやすい男・金森将輔。でも、大人になった彼の現実は回転寿司店まんぷく」で働くダメな副店長だった。横暴な店長にビビり、毎日毎日仕事漬けの社畜サラリーマン。
ある日、そんな彼が部下のミスで謝罪に向かった先はアパートのお隣さん!?「ほんまにありがとうね、金森さん」――気さくで優しい京美人の素敵な隣人と知り合った将輔は「また誰かのヒーローになれるかもしれない」とダメな自分を変えようとするが……。
わかりやすくて不器用な男の純情すぎる逆転劇が始まる。


日々を漫然と過ごしていた社畜な主人公が美人のお隣さんとお近づきになったことをきっかけに、一念発起して頑張ろうという話。
いわゆるお仕事小説ではよくある話ながら、悪くない話だとは思うが……いや、良くはないな。
クレーマーのクレーム内容が細かかったり、上司部下の嫌味やイライラしている時の自分の対応への自己嫌悪が生々しかったり、実体験から来ているんだろうと思われる描写が多くてリアリティがある。なので接客業の人が読めば共感を得られる内容になっていると思う。そのリアルさと、女性の前ではもちろん店でも外でもヘタレる主人公の性格と相まって、実にストレスの溜まる道中になっている。
それを最後にしっかり解消してくれれば痛快な話になっていた、そうなるものだと思っていたのに、残念ながらそうわならなかった。
一応主人公がキレるのだけど、微妙に彼の人の良さとヘタレ感がにじみ出てしまっていて勢いが中途半端。啖呵の口調が特に。その直前で嫌な感じに小爆発してしまっているのと、ハッピーではあるもののエンドが分かりやす過ぎたのもスッキリしない要因だろう。まあ、そもそもキレて解決は実際には有り得ないからリアリティがないのよね。
要するに、溜めていくヘイトは質も量も豊富なのに、それを一気に解消するだけの爆発力がなかった。結果読むとストレスが溜まる作品になってしまった。