いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「友達いらない同盟」園生凪(講談社ラノベ文庫)

友達いらない同盟 (講談社ラノベ文庫)
友達いらない同盟 (講談社ラノベ文庫)

俺――新藤大輔は、中学生の時に友達の定義について考えてみた。俺にとっての友達とは何か? するとすぐに答えは出た。こいつになら、まあ、殺されても仕方ない。そう思える相手。俺にとっての友達の基準はそうなり――結果高校のクラスで友達を作ることはできず、中学からの友達が別のクラスに一人だけ。そんな俺に、クラスメイトの少女・澄田が声をかけてきた。「新藤君、わたしと――同盟を組んで下さい」同盟とはいったい何をするのかと思いきや、ノートを貸し借りしたり困ったときに助け合ったりするらしい。
澄田は友達がほしくないので、孤立している俺に声をかけたらしいのだが――? 
第5回講談社ラノベチャレンジカップ受賞作が登場!

発売当時はどうせまた八幡モドキだろうと敬遠していたが、「好きラノ」で上位に入ったので購入。



主人公の大輔は当初の予想通り捻くれ系ぼっち主人公なのは間違いなかったが、予想外に正義の人だった。
他人に興味がないと言いながら、クラス内カーストにおける差別だとか、軽いイジメだとか、ちょっとしたズルだとか、見ていて嫌な気分にはなるけど咎める程でもなく見て見ぬふりをしがちな事柄について見て見ぬふりが出来ない性格で、思ったことを思わず口に出してしまったり、自分が嫌いな相手でも手を差し伸べたり。
そんな彼がひきこもりになった後輩に、高校デビューに成功しかかるもすぐに化けの皮が剥がれた少女に、自分の存在価値を見出せない少女と、“次々と”“女の子ばかり”救っていくのはラノベらしいが、救う方法がラノベらしくないというか、普通のヒーロー像からかけ離れていた。
優しい言葉をかけるわけでもなく、綺麗事を並べるわけでもなく、自分の考え方や自分に出来ることだけを提示して悩める相手を説得いしていく。その不器用で遠回しなやり方にもどかしさを感じつつも、無責任に頑張れなんて絶対に言わない誠実さを好ましくも感じる。
近くにいたら絶対凄く面倒くさい奴だし、窮屈で生き辛い性格してるなとは思うのだけど、日常に感じる嫌な事から目を背けずに立ち向かっていく若さゆえの高潔さが清々しくて羨ましい、そんな主人公の物語だった。新しい青春小説の形を見た……かもしれない。