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ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「ある日、爆弾がおちてきて【新装版】」古橋秀之(メディアワークス文庫)

ある日、爆弾がおちてきて 【新装版】 (メディアワークス文庫)
ある日、爆弾がおちてきて 【新装版】 (メディアワークス文庫)

「私、爆弾なんです」
ある日、空から降ってきたのは、高校時代に気になっていたクラスの女の子とそっくりな自称“新型爆弾”で……。
映像化もされた表題作をはじめ、「記憶が退行する風邪に罹った幼なじみ」「蘇った死者」「図書館に棲む小さな神様」などなど、“すこしフシギな女の子”と“フツーの男の子”のボーイ・ミーツ・ガール短編集。
奇才・古橋秀之がおくる不朽の名作が、書き下ろし短編を加え、10年以上の時を超えて復刊!

ライトノベル史上の傑作短編集の一つとして上げられてもおかしくない作品「ある日、爆弾がおちてきて」の新装版。



電撃文庫での刊行が11年半前。こんなに前なら新鮮な気持ちで読めるかもと思っていたが、大好きな作品で刊行後もしばらくは度々読み返していたので、結構な割合で覚えていた。但し、短編集なので好きな話は読むけどそうでもない話は読まないわけで、さっぱり憶えていない作品もちらほら。
とりあえず表題作はほとんど憶えていなかった。これ前から予備校生だったっけ? ファンタジーな設定でファンシーなヒロインなのに、ラストの切なさがあまりに現実的でちょい鬱なのが敬遠した理由だろう。
それと「恋する死者の夜」。こんなに救いのない話あったんだ、一切記憶にない。今読むとビックリするほど『神様のいない日曜日』だね、これ。
逆に最も鮮明に覚えていたのは「三時間目のまどか」。時間モノとしての仕掛け、コミカルだけどドラマチックでもある意思伝達方法、ヒロインの魅力。何度読んでも文句なしの傑作。
あとは「むかし、爆弾がおちてきて」のラストシーンは今読んでもこそばゆくてにやけてしまう。この話の主人公は世紀の大馬鹿野郎なわけだけど、こんなことがあっても公開中止になることもなく(辺りが暗くなってたりはしないので)、また何年経っても助け出す技術は開発されてないってことだよね。それに外から見た時の家族や知人の居た堪れなさを考えると苦笑いレベルでは済まないな……とか無駄なことを考えてしまった。
さて、この新装版の目玉の書き下ろし短編「サイクロトロン回廊」は
正統派なタイムスリップもの。裏テーマは「時間モノ」と言いつつ変化球な仕掛けの短編集の中で、ここにきてのド直球にちょっと驚き。 
37歳の主人公に対して、変わらないことへのネガティブな意見を出しつつも、結局人間そうそう変わらないなという結論に至る、主人公と同年代以上が読むとしみじみしてしまいそうな内容。若者が読んでも面白そうじゃないが、これはメディアワークス文庫だからいいのか。 
この姉ちゃん父子喧嘩する度に来そうだな。その内タイムスリップする前にバターになりそうw