いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「86―エイティシックス― Ep.2 ラン・スルー・ザ・バトルフロント〜 〈上〉」安里アサト(電撃文庫)

86―エイティシックス―Ep.2 ―ラン・スルー・ザ・バトルフロント―〈上〉 (電撃文庫)
86―エイティシックス―Ep.2 ―ラン・スルー・ザ・バトルフロント―〈上〉 (電撃文庫)

共和国の指揮官・レーナとの非業の別れの後、隣国ギアーデ連邦へとたどり着いたシンたち〈エイティシックス〉の面々は、ギアーデ連邦軍に保護され、一時の平穏を得る。
だが──彼らは戦場に戻ることを選んだ。連邦軍に志願し、再び地獄の最前線へと立った彼らは、シンの“能力”によって予見された〈レギオン〉の大攻勢に向けて戦い続ける。そしてその傍らには、彼らよりさらに若い、年端もいかぬ少女であり、新たな仲間である「フレデリカ・ローゼンフォルト」の姿もあった。
彼らはなぜ戦うのか。そして迫りくる〈レギオン〉の脅威を退ける術とは──?
第23回電撃小説大賞“大賞”受賞作第2弾! シンとレーナの別れから、奇跡の邂逅へと至るまでの物語を描く〈ギアーデ連邦編〉前編!
“死神は、居るべき場所へと呼ばれる”

1巻の第七章と終章の間の出来事が語られるシリーズ第2弾。シンたち5名のエイティシックスのその後が語れれる連邦編上巻。まあ語るならここしかないよね。
1巻はエイティシックスの置かれた状況のあまりの理不尽さと綱渡りな戦場に心を痛めつつ、それでも生き抜く少年たちに感動を覚える作品だった。それが、舞台が卑劣な共和国からまともな連邦に移ったら“ぬるく”なってしまうのではないかと心配していたが、全く要らない心配だった。
前と違って補給はあり友軍もいる状況ながら、〈レギオン〉の攻勢は共和国よりよほど苛烈で、戦闘の緊張感は全然損なわれていない。むしろ、その前の束の間の安息と対比で厳しく感じるくらい。
そしてエイティシックスの立場は豚から怪物へ、迫害から忌避へと変化していた。
どちらにしても人間と認められないことへの怒りと、結局戦場に戻っていってしまい未来が見えない彼らの歪みが相まって何とも言えない気分になる。やっぱりえげつないわ。
でも、こうやってとことんまで突き落としてくれるから、そこで生き抜く彼らが輝いて映るんだよな。
今回もまたとても熱くなる作品だった。下巻も楽しみ。ここから1巻の終章の状況まで盛り返すのは容易ではなさそうだが、どうなる?