いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「探偵が早すぎる (下)」井上真偽(講談社タイガ)

探偵が早すぎる (下) (講談社タイガ)
探偵が早すぎる (下) (講談社タイガ)

「俺はまだ、トリックを仕掛けてすらいないんだぞ!?」完全犯罪を企み、実行する前に、探偵に見抜かれてしまった犯人の悲鳴が響く。
父から莫大な遺産を相続した女子高生の一華。四十九日の法要で、彼女を暗殺するチャンスは、寺での読経時、墓での納骨時、ホテルでの会食時の三回! 犯人たちは、今度こそ彼女を亡き者にできるのか!?
百花繚乱の完全犯罪トリックvs.事件を起こさせない探偵!

四十九日の法要当日。大陀羅一族による寺、墓、ホテルの三か所で仕掛けられる暗殺ラッシュに早すぎる探偵がどう立ち向かうのか、注目の下巻。
探偵が犯人のトリックを見破って、その手法を真似て犯人に仕返しをする『トリック返し』。ここが上巻で最も面白く痛快な要素だった。
寺はまだ良かった。上巻での凝った『トリック返し』に比べてしまうと見劣りするものの、『トリック返し』が残っていたから。
そこから墓、ホテルと場面が進み、刺客と仕掛けが増えていくと探偵は対応に追われ、推理はだんだんおざなりに、そして『トリック返し』はなくなってしまう。特にホテルでは事件が立て込み過ぎていてごちゃごちゃしていた印象しかない。それでも最後ぐらいはと期待したのだけど……。
それと一華の友人二人の不自然さ、必然性の無さも気になった。探偵側か大陀羅一族かどちらかに関係があるから居るのだと思っていたのに、最後まで一華との会話係りで肩すかしを食らった気分。
ラストの橋田の正体明かしにも何の驚きもないし、いやもう尻すぼみ感が半端ない。
勢いのある展開は嫌いじゃないし全然面白くなかったわけではないけれど、推理も仕返しも丁寧だった上巻の方が断然面白かった。